アップル、「雑誌版ネットフリックス」買収 新たな定額サービスを構築か
アップルは3月12日、定額雑誌購読サービス「テクスチャ」を買収したことを発表した。同サービスは、月額制で動画を配信して大きな成功を収めているネットフリックスの雑誌版とも言われており、同社の今後の事業展開に関しては様々な予想が報じられている。
◆ベストアプリの買収
同社が発表したプレスリリースによると、テクスチャは現在、世界中の200以上の雑誌を月額制で配信している。同サービスは2010年に始まったのだが、2016年にはもっとも革新的なiOSアプリを選出する年間ベストアプリに選出された実績がある。同サービスの買収に関して、同社インターネット・ソフトウェアおよびサービス部門のシニア・ヴァイス・プレジデントのエディ・キュー氏は「テクスチャがアップルの仲間となることで、世界中の有力なパブリッシャーから配信された印象的な雑誌のカタログがサービスに加わることに興奮しています」「わたしたちは、確かなソースにもとづいた報道と雑誌が美しくデザインされ読者にとって魅力的なストーリーで満たされ続けることを約束します」とコメントしている。
また、テクスチャを運営するネクスト・イシュー・メディアのCEOジョン・ローリン氏は「ネクスト・イシュー・メディアとベストアプリに選ばれたテクスチャがアップルに買収されることにスリルを覚えています」と述べている。
◆ヒトはアルゴリズムより信じられる?
ワシントン・ポスト紙は、アップルのテクスチャ買収の意図を評した記事を掲載した。記事では、今回の買収はニュース報道においてフェイスブックやグーグルに対抗する意図を指摘している。フェイスブックやグーグルが提供する動画配信サービスであるユーチューブは、ニュースの抽出をソフトウェアが自動的に実行している。対して、現在アップルがアメリカを含む一部の地域で配信している純正ニュースアプリであるアップル・ニュースは、ヒトによって記事を選定している。また、同社が展開する定額音楽サービスであるアップル・ミュージックにもヒトが選曲した楽曲を配信するポッドキャスト・サービスがある。
コンテンツの配信に関して、パブリッシャーたちは近年はフェイスブックに注目してきた。しかし、今年1月、同社はニュースフィードの表示アルゴリズムを変更したことで、パブリッシャーのニュース表示が少なくなってしまった。この措置について、多くのパブリッシャーが不満を持っている。こうした状況のなかでアップルのテクスチャ買収が報じられたわけだが、ノース・カロライナ大学のメディアおよびジャーナリズム校のダニエル・クレイス准教授は、ニュース配信に関してアップルがフェイスブックより良いパートナーであるかどうかは明らかではない、とコメントしている。
◆アップル・ミュージックのニュース版を目指す?
テック系ニュースサイト『テック・クランチ』は、今回の買収に関してアップルはアップル・ミュージックに並ぶ定額コンテンツ配信サービスの構築を目指しているのではないか、と評した記事を掲載した。200以上の雑誌を配信するテクスチャは、一部の地域でしか配信されていないアップル・ニュースを継承するかも知れない、とも述べている。
そのほかに考えられる買収の意図として、ただ単にアマゾンが昨年始めた定額コンテンツ配信サービスやグーグルが提供しているアンドロイド対応ニュースアプリに対抗するため、と報じている。