アップル株主、子どものスマホ中毒への対策求める 「業界に規範を」

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 アップルに投資する大手2機関は、デジタル機器やソーシャルメディアが若者に及ぼす影響について懸念が増していると主張し、iPhoneを製造するアップルに対し、子どものスマートフォン中毒を予防するよう働きかけを求めた。

 ニューヨークを拠点とするジャナ・パートナーズと、カリフォルニア州教職員退職年金基金は、アップルに対する公開状を発表し、子どものデジタル機器中毒予防促進に向け、さらなる対策とツールを提供するよう求めた。2つの投資機関は、合計20憶ドル(約2,200億円) 相当のアップル株を所有している。

 公開状では、「アップルは、次の世代を担う子どもたちの健康と発達を配慮することが、優良なビジネスであると共に、規範的行動であるということを業界に示す上で、極めて重要な役割を果たすことができる」としている。

 アップルへの提案としては、児童発達の専門家らを集めた専門家委員会の発足、アップルが持つ「膨大な情報資源」の研究者への提供、親が子どもの健康を保護するための機能追加に向けたモバイル端末のソフトウェア改良などがある。

 アップルは声明を発表し、iPhoneを始めとするソフトウェアを使ったモバイル端末においてはすでに、親が「インターネット上で子供がダウンロードしたりアクセスしたりする可能性のあるあらゆるもの」を、効果的に制限、ブロックできる様々な規制機能を提供していると述べた。

 投資機関の発表した公開状では、スマートフォン及びソーシャルメディアが、子どもの心身の健康に及ぼす悪影響を調査した様々な研究結果を引用している。例えば、教室内でデジタル機器を使用することで、注意力が散漫になる。また学生の勉強への集中力が低下する、自殺や鬱病のリスクが増加するといったことが挙げられている。

 11月に発表されたある調査では、10代の若者がスマートフォンやソーシャルメディアを頻繁に使用すると、鬱病など自殺に繋がる気質を持つようになる傾向があると示唆している。しかしこの調査を始め、同様の研究はいずれも、すでにトラブルを抱えている若者のスマートフォンやソーシャルメディアの使用頻度が、トラブルのない若者に比べて高いという可能性を否定できていない。

 10代の若者によるメディアの使用について、米国小児科学会の最新の見解を見てみると、2016年に、10代の若者によるソーシャルメディア及びインターネットの使用は、有益であると共にリスクもあり得ると述べている。また小児科学会は、利用時間やコンテンツに制限を設けるなど、各家庭で計画的にメディアを使用するよう求めている。

 アメリカ精神医学会は、インターネットの過度な使用を、正式な精神疾患としての中毒とは見なしておらず、さらなる研究が必要としている。

 先月27日に発表された公開状は、デジタル機器とソーシャルメディアによる長期的な影響の中でも、特に幼少期からスマートフォンを使い始めている子供たちへの影響について、懸念が高まっていると述べている。

 テクノロジー企業は、自社のデジタル機器が中毒をもたらす可能性があると、公には認めていない。しかしシリコンバレーの内部関係者らの中には、デジタル機器やモバイルアプリ、ソーシャルメディアサイトが、ユーザーの関心を出来る限り繋ぎとめようと、中毒性を持つよう設計されていると暴露する者も現れるようになった。

 例えばフェイスブックの初代社長、ショーン・パーカー氏は、最近、同社がユーザーを中毒状態にするため「人間の心理の弱いところ」を利用していると発言。次々と投稿されるコメントや、「いいね」などの反応を、「人間の脳の作用を利用した、ソーシャルバリデーションによるフィードバックループ」と表現し、「それが子どもたちの脳にどう影響するかは、誰にもわからない」と述べた。

 子どものテクノロジーの使用について研究している非営利団体、コモン・センス・メディアのCEOを務めるジェームズ・ステイヤー氏は、携帯電話が「公衆衛生に関わる問題」であることを明確にしようという取り組みを進めており、その取り組みにおいて公開状の発表は、「重大な出来事」だと言う。

 ステイヤー氏によると公開状は、「このような問題について、今後さらに大きな議論が展開されるきっかけとなるものであり、それを株主が気にかけているということが、素晴らしい」。

 アップルは、iPhoneを始めとする同社製品が利用者に与える影響を、定期的に検討していると言う。また、「我々はこの責務をとても深刻に受け止めており、特に子供たちの保護については、顧客の期待に応えるだけでなく、期待を超えられるよう尽力している」と発表した。

 ステイヤー氏は、アップルはさらに積極的な取り組みを行うべき立場にあると言う。同氏によると、例えば、携帯電話の影響に関する独自調査への出資や、テクノロジーの良識的な使用方法について、親と子の双方に向けた啓蒙キャンペーンの実施などが可能だ。

 しかしステイヤー氏によると、さらに深刻な問題は、ソーシャルメディア企業が、「子どもたちの心を掴んで離さないようにプラットフォームを設計している」ことだ。同氏はまた、ツイッター、フェイスブック、スナップチャットといった企業は、「国民や、株主が大きなプレッシャーをかけなければ」変わらないと言う。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの報道では、投資機関のひとつであるジャナ・パートナーズは、社会的責任に貢献する投資活動を重視しており、アップルへの公開状は、より大規模な施策の始まりだとしている。同紙によると、ジャナ・パートナーズは、「より善良な企業市民」となるべき企業への投資を目的とした新たな基金、ジャナ・インパクト基金を発足するため、数十億ドルを集めようと計画している。良識的な企業は、株主のみならず、社会にとっても、より大きく長期的な価値を生み出すことができるというのが、基金のコンセプトだ。

New York (AP)
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP