日本人は「快適な職場環境」を求める一方、キャリアアップ志向は弱い 調査結果
人材サービスのランスタッドホールディング・エヌ・ヴィーは、グローバルで勤務先として魅力のある企業を調査する「ランスタッド・エンプロイヤーブランドリサーチ 2017」にて、働き手が考える「理想的な職場」に関して日本人とグローバルの傾向を比較すると、「職場環境」や「キャリアアップ」について大きな意識差があると発表した。
◆キャリアアップ機会よりも、快適な職場環境を求める日本人
勤務先を選ぶ上で重要視される9項目から、理想的な職場に欠かせないと思うものを回答した結果が以下の表だ。「職場環境の快適さ」が重要だと回答した日本人は全体の60%で、ほかの項目と比較して最重要視されていることが分かる。一方、グローバル平均は43%にとどまり、その差は17%だ。職場環境の快適さは、日本人にとって欠かせない要素であると同時に、グローバルの他の項目と比較しても特筆すべき点であることが読み取れる。
また、日本人の「キャリアアップ志向」が低いことが判明している。グローバルでは「キャリアアップの機会がある」ことを重要視したのが全9項目のうち4番目だったのに対し、日本人は6番目で、その差は13ポイントに及ぶ。
◆世界共通の安定志向
年代別で見ると、「キャリアアップの機会」に対し、日本とグローバルは共に年齢が上がるにつれて重要度が下がる。一方で、「長期にわたる安定した雇用機会」において、若年層(18~24歳)と中年層(25~44歳)は日本がグローバルよりも重要視していたが、高齢層(45~65歳)についてはグローバルのほうが高く、7ポイントの差があった。
こうした調査結果について、ランスタッド・リサーチインスティテュート所長の中山悟朗氏は、以下のようにコメントをしている。
「今回の調査結果では、日本の働き手は海外と比較すると職場環境の快適さをより重要視する一方、キャリアアップの機会に対する比重は小さいことがわかりました。良い職場環境の条件は、オフィス環境などのハード面を指すと同時に、職場の良好な人間関係といったソフト面も大いに含まれていることでしょう。男女問わずこの傾向が変わらなかった本調査結果は、和を重んじる日本の国民性を表しているのかもしれません。
一方で、「長期にわたる安定した雇用機会」は、日本とグローバル結果両方とも年齢が上がるにつれて重要度が高くなる傾向が導き出されました。高齢層についてはグローバル結果のほうが寧ろ日本よりも高く、終身雇用を求める安定志向が強調されがちな日本人にとっては意外な結果だったのではないでしょうか。弊社が2017年第3四半期に発表した「ランスタッド・ワークモニター(労働者意識調査)」によると、日本企業は他国と比較し、労働者に対するスキルアップ支援体制や実施率が極端に低い結果でした。
今回の調査結果と併せると、グローバルでは安定した雇用とキャリアアップの機会を同時に求める労働者の声に、企業側もスキルアップの機会を積極的に与え、応えていることが読み取れます。キャリアアップの機会と安定雇用を相反した考え方で捉えることなく、自社の従業員に提供するスキルやキャリアの向上機会に重点を置いた組織が魅力的だという表れなのではないでしょうか。また、キャリアアップと言っても、「1つの職種で役職を上げる」ことに価値を感じる社員もいれば、「様々な職種に就き、多くの経験をする」ことに価値を感じる社員もいます。そうした多様な価値観を認め、支援姿勢やメリットを示すことで働き手は自らの価値が認められていると感じ、キャリアアップの機会と安定雇用を同時に達成することができるのではないでしょうか」