デジタル人材不足も企業は育成に消極的 投資後の離職を懸念 調査結果

nd3000/shutterstock.com

 キャップジェミニはLinkedInと共同で、デジタル人材のギャップに関するグローバルレポートを発表した。このレポートでは、特定のデジタルスキルをもつ人材の需要と供給、複数の業界ならびに国・地域におけるデジタルロールの有用性について分析している。

 このレポート(The Digital Talent Gap―Are Companies Doing Enough?)では、従業員が自分のデジタルスキルを評価する際に感じる懸念や、現在職場内に従業員が使用できるトレーニングリソースが存在しない/不足していることが明らかになった。また、レポートのハイライトのひとつとして、従業員の50%近くは、時間とお金を投資して、勤務時間外に自腹で自分のデジタルスキルを磨いているという事実も明らかとなった。

◆拡大しつつあるデジタル人材ギャップ
 調査対象企業の2社に1社が 「デジタルギャップは広がりつつある」と認識している。「デジタル人材のギャップは企業のデジタルトランスフォーメーションプログラムを阻害し、デジタル人材の不足は、企業に競争優位性を失なわせる」に対して、半数以上(54%)の企業が同意を示している。

 人材ギャップが広がってしまったにもかかわらず、デジタル人材を育てるためのトレーニングの予算は、調査対象企業の半分以上(52%)で横ばいまたは削減傾向を示していいる。また、調査対象企業の50%が「デジタル人材のギャップについて話題にし続けてはいるが、ギャップを埋めることはあまりしていない」と回答した。

◆スキルのありきたり化(余剰)・無用化に関する懸念が離職を促す?
 現在、従業員の多くが自分のスキルについて、「すでに余剰・無用」あるいは「近い将来余剰・無用となる」と懸念している。全体では、従業員の29%が自分のスキルセットは「すでに余剰・無用」または「1~2年以内に余剰・無用となる」、また1/3以上(38%)が「4~5年以内に余剰・無用となる」と答えている。特にY世代とZ世代では従業員のほぼ半数(47%)が「現在の自分のスキルセットは、この先4~5年で余剰・無用となるだろう」と感じている。

 業界別に見ると、今後4~5年でスキルセットが余剰・無用となると答えた従業員が最も多かったのは、自動車業界(48%)、続いて銀行(42%)、通信、保険(いずれも39%)という結果であった。また従業員は、企業のトレーニングプログラムについて、あまり効果的ではないと感じているようだ。今日のデジタル人材の半数以上が「役に立たない」または「出席する時間がない」と答え、また半数近く(45%)が「無益で退屈」と表現している。

 スキルの余剰・無用化に関する懸念、そして企業によるスキルアップの取り組みに対する信頼の欠如が、離職の潜在的な引き金となっている。デジタル能力・スキルのある従業員の半数以上(55%)は、「現在の職場では自分のデジタルスキルの成長が見込めないと感じたら、別の企業に移る意思がある」と答え、また半数近く(47%)が「より優れたデジタルスキルの育成を提供する企業に魅力を感じる」と答えている。

 しかしながら企業は、雇用する側には「スキルアップした従業員の離職」という懸念事項もあることを指摘している。雇用主のほぼ半数(51%)が「従業員はトレーニングを受けた後に退職する」と考えている。

◆必ず求められる、マストハブなデジタルロール
 今回レポートでLinkedInのデータを分析した結果、この1年間で平均して最も需要が高かったのは、データサイエンティスト、フルスタック(マルチ)開発者だった。以下に、今後2~3年で最も注目を集めるデジタルロールのトップ10を順番に掲載する。

・情報セキュリティ/プライバシーコンサルタント
・最高デジタル責任者/最高デジタル情報責任者
・データアーキテクト
・デジタルプロジェクトマネージャー
・データエンジニア
・最高顧客責任者
・パーソナルWebマネージャー
・最高IoT(モノのインターネット)責任者
・データサイエンティスト
・最高アナリティクス責任者/最高データ責任者

Text by 酒田 宗一