「日本で核シェルターの需要が急増」“シェルター大国”スイスの公共放送も特集
北朝鮮でミサイルや核実験が続く中、日本に住む人たちの間でも、万一の事態に備えようという動きが出ている。核攻撃などから身を守り、避難生活を送れる頑丈な核シェルター(避難所)を自分の家に設置する人たちが増えているのだ。このシェルターはスイス製だという。スイスの公共放送が8月、神戸市の輸入販売業者をニュースで取り上げた。
◆頑丈なスイス製
スイスでは、他国からの攻撃や自然災害などの緊急時に備え、住居内や公共の場にシェルターが設けられている。多くの場合、地下に作られており、窓がない(ガスを防ぐフィルター付きの換気装置はある)。スイス連邦民間防衛(BABS)のサイトによれば、2017年9月初めの時点で、全国の建物内(私邸、企業、公共施設、病院)に作られたシェルターの数は約36万、公共シェルター施設は1700強にも上る。建物内のものは、人や文化財の保護が目的で、公共シェルター施設は、司令メンバー、消防関係者の訓練や非常時に使用されたり、病人のための場所として確保されている。
これだけの数があれば、非常時にスイスの全住人がシェルターに避難でき、しばらくの間、生活を送ることができる。北欧やドイツなど、ほかのヨーロッパ諸国にもシェルターはあるが、スイスのように安全で頑丈なシェルターを住人すべてに用意している国はない。
シェルターは普段、仕事場、音楽用、工作用、子どもたちの遊び用、大人の各種クラブなど、普通の部屋として使われていることが少なくない。貸すことも許されている。最近では、増加する難民を収容する場所が不足しているため、一部の公共シェルター施設が住まいとして使われている。
◆日本ではメンテナンスなし
そのような「シェルター先進国」のスイスで8月20日、夜7時半のニュース番組『ターゲスシャウ』が、「防御施設の建設が、日本でブームに」と約3分にわたって報じ、スイス製シェルターを設置・販売する織部精機製作所の社長たちのコメントを伝えた。
テレビカメラは、ある一軒の家の玄関先をとらえ、「訪問者は、この家には何も変わったことはないと思うでしょう」とナレーション。次に、地下へ続く階段を映しながらシェルター内に入り、「でも、物置の入り口は冷戦(1945~1989年)を思い起こさせます*。約50年前、企業・織部は、スイスのノウハウを使って、この家に最初のシェルターを作りました」と説明した。(*スイスで核シェルターが計画的に作られるようになったのは、冷戦時代の1960年代だったため)
ニュースによると、織部精機製作所では、その時点で昨年の26倍もの注文があったそうだ。「スイスの製品はシンプルで壊れません。メンテナンスや修理はほとんど必要ありません」と織部健二社長はコメントした。
ちなみに、スイスでは、自治体による定期的なメンテナンスが建物内のシェルターで行われている。チェック項目が100にも上る場合もあるといい、シェルターが常に万全に機能するよう注意が払われている。
◆シェルター購入後、顧客からは連絡が途絶える
放映では、ディレクタ―(前社長)の織部信子氏もコメントしている。コメントによれば、顧客は資金に余裕のある企業や、医師が多い。特徴的なのは、顧客たちが、核シェルターを持っていることを秘密にしている点だ。シェルターがあると知られてしまったら、非常時に近所から人が詰めかける可能性がある。それは避けたいのだ。信子氏は「設置後、お客様たちは、私どもに連絡を取ることもございません」とも話し、顧客たちが施工者の気配を消し、安全な空間の確保にとても慎重でいる様子がうかがえた。
同社のサイトにアクセスしてみると、トップページに本ニュースの動画がリンクされている。また、アメリカのメディアから取材を受けた動画も載っている。創業100年以上の同社への注文は、今後ますます増えるだろうか。