新研究で被雇用者と起業家のネットワーク構築の課題が浮き彫りに

LOFTFLOW / Shutterstovk.com

著:Libby Sanderボンド大学 Lecturer, Bond Business School)

 社会的ネットワークは雇用者にとっても被雇用者にとっても大切だ。多様なつながりをもつ人は、より優れたアイデアを生み出すのに役立つ情報にアクセスすることができることが研究により示されている。

 特に、職場の社会的ネットワークはイノベーション、昇進、職場における個人の業績に寄与している。このようなネットワークは個人がリソースや情報、サポートへアクセスするのに役立つ。社会的ネットワークを利用することで仕事に関する目標を達成する可能性が高くなる

 これまでの研究では、新たな関係構築の重要な要因として、他の人々と近い関係にあることが挙げられている。従業員は多くの場合、地方の経済クラスター(シリコンバレーなど)への移動、起業支援事業やコワーキングスペースへの参加、他の起業家、投資家、顧客に接近する方法の発見を促される。

 このたび、ミネソタ大学のソフィア・バプナ、ラッセル・ファンク両氏の新たな研究で、新たなつながりを構築するためには空間的だけでなく社会的な障壁を緩和する必要があることが突きとめられた。

 社会的ネットワークを構築しようとするとき、次の2つのタイプの課題に直面する。1つ目は、求めるネットワークがはっきりしないこと、すなわち、どのようなタイプのつながりを構築すべきなのか、つながりを構築するにはどこを探せばよいのか、ということだ。2つ目は、新しいグループに参加することへの不安だ。このような不確かさは、男性優位の職業に就く女性に一層顕著だ。

 自分とは異なる人々との様々なネットワークを構築することで、新しい情報やリソースを取得することができる。自分のネットワークを多様化させようとする人々は、多くの場合、新しいグループの規範と期待に確信がもてない。その結果、人は自分と似ている人々とのつながりを構築することに重点を置く傾向があることを研究は示している。

 研究でSTEM(科学、技術、工学、数学)産業の女性が少ないことを考慮し、バプナ、ファンク両氏はこの不均衡が改善できる方法に関心を示した。

 この研究では、1,161人(内27%が女性)の情報技術会議の参加者を、対照グループ、探しているものが不確かなグループ、社会的に不確かなグループの3つのグループに割り当てた。対照グループの参加者は、会議に参加する人を検索し、メッセージを送ることができるアプリを持っていた。他の2つのグループは出会うべき人物に関する具体的な推奨事項を会議運営者から電子メールで受け取った。

 対照グループでは、女性が連絡を取る回数が男性よりも少なく、新たにできた知り合いと話す時間は遥かに少なかった。このグループは、男性の参加者と比較して知り合いが43%少なく、新たな知り合いと話すために使った時間は48%も少なかった。

 他のグループでは、女性の参加者は、対照グループの女性と比較して55%も多くの新たな知り合いを作った。また、探しているものが不確実なグループでは、新たな知り合いと話すのに費やした時間は、対照グループと比較して84%も増加した。

 この結果は、組織的に紹介を受けた個人は、はるかに多くの知り合いを作り、紹介を受けなかった人に比べてこれらの知り合いと遥かに強力な絆を構築したことを示している。

 上記の発見は、雇用者と被雇用者の双方に単に、特別の設定やイベントをもたらす以上に、機会を創出することの重要性を強調している。最近私が行なった研究は、新事業支援やコワーキングスペースを主催する役割は新たな、そして様々なネットワークを形成する機会を突き止め、創り出すのに役立てるために非常に重要だった。

 起業家は新たなベンチャーを構築するために社会的な結びつきに依存し、被雇用者はイノベーションを生み出し実績を上げるために効率的な職場のネットワークに依存する。この新研究は新たな結びつきとネットワークを容易にするための空間的設定と明確な戦略の両方の重要性を明らかにしている。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by サンチェスユミエ

The Conversation

Text by The Conversation