モンスター社員が生まれるのは、経過よりも目標に焦点を当てられた時
著:Chris Jackson(ニューサウスウェールズ大学 Professor of Business Psychology)、Benjamin Walker(ニューサウスウェールズ大学 Postdoctoral Research Fellow in Management)、Elliroma Gardiner(グリフィス大学 Lecturer in Organisational Psychology)
達成までの道筋に関係なく、セルフコントロールの増進に時間と労力をつぎこむよりも、ゴールに焦点を置きつづける企業が増え続けている。企業はアウトプット、レポート、およびメトリクスに執着するあまり、どれだけコストがかかろうとも、パフォーマンスが最優先であるというシグナルを従業員に送っている。
このことが数々の企業の劇的な失敗につながった。 たとえば、ライドシェアリング事業のUberは、事業において不十分なリーダーシップが手本となり、従業員の不十分なセルフコントロールが目立った。 またフォルクスワーゲン社の2015年のスキャンダルは、パフォーマンス目標がどのように満たされているかについて十分な精査がないときに起こり得る、はっとするような例である。
我々の多くは、セルフコントロールにおいて瞬間的に過ちを犯している。 これは、クライアントのレポートを終わらせずにフェイスブックをだらだらとやっているとか、いらいらする同僚に対して冷静でなくなるなど、さまざまだ。 調査によると、セルフコントロールができないことが、一般的に機能不全の結果につながるのだ。
我々の調査が強調するのは、破壊をもたらす指導者は、特にタスクに対する不安が大きく、タスクが困難なときに十分なセルフコントロールができなくなるということである。 一方、建設的な指導者は、セルフコントロールを十分に行い、うちのめされにくい。
◆ゴールからセルフコントロールに焦点をうつすには
現代企業の中で成功するためには、感情や行動の反応を制御するセルフコントロール機能が不可欠であるということが広く認識されている。 セルフコントロールの起源は、少なくとも部分的に、生物学的に基づくと考えられている。 したがって、セルフコントロールができるように教えられる一方で、従業員が職場での行動をコントロールするように訓練することは、必ずしも容易ではない。
ふつう企業が従業員の業績を測定する方法の良い例として、ノートン氏とキャプラン氏が開発したバランスト・スコアカードがある。 バランスト・スコアカードは、従業員とチームが達成しなければならないバランスがとれた目標の範囲を設定し、簡単に監視できるように縦つなぎとなっている。
このようなツールに依存することによって、セルフコントロールを特定できなくなり、さらには不十分なセルフコントロールを奨励してしまう。それにより、セルフコントロールの不十分な個人が上級指導者の地位に達する道を作り出すような責任の低い環境を作り出してしまう可能性がある。 調査によると、パフォーマンスに焦点を当てることによって、スタッフの学習や成長は減るが、努力や経過に焦点を当てることにより、企業ははるかに良い立場にいける。
従業員のセルフコントロールを奨励し、セルフコントロールの失敗の影響を最小限に抑えるには、複数の方法がある。
ひとつは、スタッフに「参加の文化」を根付かせることである。 会議では、誰もが意思決定に関与していれば、適切な議論が成功する可能性がある。 そう、ブレインストーミングが実際に働くのだ!なぜならば、発言権があると感じる多様なグループの人々からの貢献を奨励することによって、問題と解決策の所有権を共有することに重点が置かれているからである。
マインドフルネス・トレーニング(注意深くなるためのトレーニング)はまた、セルフコントロールを促進するために広く採用されており、それが幸福を改善できることを示唆する新たな証拠もでてきている。 最高のマインドフルネス・トレーニングは、ルールを守りながらよりリラックスしたことを単に学ぶのではなく、良いプロセス、反省、疑問倫理に焦点を当てている。
効率的な企業は、自制、良いプロセス、適切な議論を奨励し、非現実的なパフォーマンスメトリクスよりも成長の考え方によって推進される。 問題の要点は、パフォーマンスが重要である一方で、プロセスを犠牲にするべきではないということである。 従業員のセルフコントロールを促進、奨励することは、良いプロセスを守る一つの方法なのである。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by yoppo