ディズニーランドへ行かなくてもミッキーに会える? IT巨人達注目のVRの可能性とは

 VRは、人工的に作られた空間にユーザーが没入することができる技術を指す。現段階では、視界を覆うゴーグルを装着することで、ユーザーをグラフィックで作られた3D空間へ誘い出すような錯覚を生み出すものである。このVR市場は、現実にグラフィックを重ねて、見えているものに付加情報を与えるARと合わせて、2020年までに18兆円の市場にまで膨らむと見込まれている。こうした可能性に、IT業界の巨人たちも黙ってはいない。フェイスブックはオキュラスを20億ドルで買収し、グーグルもまたマジックリープに5億4200万ドルを出資した。いずれの企業もVRを取り扱う新興企業たちだ。今までにない技術だが、これがきちんとしたビジネスに結びつかなくては、市場の成長は達成しない。では、一体、VRはどの産業への参入が見込まれるのか。

◆VRが変革をもたらすと見込まれる4つの産業
 まず、ゲーム業界である。ソニー・コンピューターエンターテイメントは9月15日に行われた「SCEJA Press Conference 2015」にて、VR技術を用いたヘッドセット型の「Playstation VR」を発表した。プレイヤーがゲームの世界に没入できる機会を与えるのに、VRとの相性はばっちりだ。ゲーム業界への参入は既に一般化されている。例えば、乗馬ゲーム「Hashilus」ではVR映像とマッサージ用の乗馬マシンを組み合わせることで、よりリアルな体験をすることができる。

 次に、映像やアニメーションにもVRの活躍が見込まれる。ゲームと同じように作品が持つ世界観に誘い込むことを促す。VR企業のオキュラスは「Oculus Story Studio」を設置し、自社内でVRを使った作品を手掛けていく。また、ディズニーもVR系のスタートアップであるJanutに6,500万ドル出資した。ディズニーランドに行かなくても、ミッキーたちとVRでいつでも会えるかもしれない。

 教育や医療の現場といった、情報をより分かりやすく伝える分野でもVRは注目されている。大学や研究所ではVRの導入が始まりつつある。ディヴァースが開発中の「VR ENGLISH LESSON」はVRを使い、まるで自分が外国にいるような感覚で英語を学ぶことができる。学ぶより、慣れろと指摘がある語学学習では特に需要があるかもしれない。

 あるいは、ツーリズム業界もある。9月25日、26日に行われた「ツーリズムEXPOジャパン」ではエイチアイエスがバーチャルにハワイ旅行ができる3D映像のデモを出展し注目を浴びた。ツーリズムに求められる要素も、没入感である。日常から離れ、旅行体験に没入させる。VRが解決できるレイヤーに当たる。

◆VRだけが持つ「没入感」を使って、何ができるのかを考える
 VRが持つ没入感は上記に挙げた産業をはじめ、様々な分野に渡り、活躍が見込まれるだろう。しかし、まだ18兆円市場に至るまでは障壁が幾つもある。発売されているような分厚いヘッドセットが日常に使われるのは現実的ではないし、画質や価格の問題もある。

 「想像して欲しい。スタジアムの最前席で観戦をし、世界中にいる同級生や先生と共に教室で勉強をする。あるいは、面と向かって、お医者さんに診察を受ける。これら全てがあなたの部屋でただゴーグルを装着しただけで、完結するのだ。」これはオキュラスを買収した際に、フェイスブックCEOのマークザッカーバーグが投稿した一文である。今行われているあらゆる体験が仮想で済んでしまうのは、怖い部分もあるが、非常に楽しみでもある。

Text by 山田俊輔