Apple Musicも採用 古くて新しいサブスクリプションの意外な採用事例とは

 アップルが2015年7月1日よりサービスの提供を開始した「Apple Music」。これは音楽の定期購読システム、いわゆるサブスクリプション型のサービスである。今までのように音楽を1曲ずつ購入する必要がなく、1ヶ月のサービス契約をすればその期間は、音楽を聴き放題という仕組みだ。

 Apple Musicでは、アップルが「Apple Musicライブラリ」をオンライン上で用意しており、数百万曲もの様々なジャンルやアーティストの曲が聴き放題になる。こうしたサブスクリプション型のビジネスモデルを採用しているのはアップルだけではない。アドビシステムズ、アマゾン、マイクロソフト、ネットフリックスなど既に巨大なプラットフォームを持つ企業を中心に、この仕組みは取り入れられている。

◆クラウドサービスの普及から注目を集め出した「サブスクリプション型」
 改めて、サブスクリプション型とは、サービスを決められた期間使うことができる使用権を付与することによって、サービスの契約を交わすビジネスモデルである。真新しく見えるサブスクリプション型だが、新聞や生鮮食品の定期購買と変わらず、全く新しいモデルというわけではない。

 では、なぜ今このサブスクリプション型が注目され始めているのか。その一つに、クラウド技術が市場に深く浸透してきた点が挙げられる。例えば、アドビシステムズが提供している定額制でPhotoshopやIllustratorを利用することができるCreative Cloudでは、契約しているメールアドレスとパスワードを保管しておけば、2台のパソコンでインストールして利用することができる。

◆採用事例は音楽、テレビドラマ、電力までに多業界に行き渡る
 今回はアップルが注力していた音楽事業である「iTunes」と「Apple Music」を比較することで、このビジネスモデルを更に詳しく見ていこう。iTunesでは、CDを購入するまでを電子化したことに過ぎない。好きな音楽を選んで、購入をするとデータで受け取り、それを自身のiPodやパソコンに入れて楽しむことができる。

 Apple Musicでは、音楽を購入することはなく、契約すれば、Apple Musicライブラリ上で好きな時に好きなだけ、好きな音楽を聴くことができるようになる。しかし、音楽を保存することはできない。音楽の楽しみ方に違いはあるものの、ただ音楽を楽しみたいというユーザーに合わせてサービスの主軸を移行していったと考えられる。

 このサブスクリプション式の事例は多業界に行き渡る。音楽やテレビドラマ、あるいはゲームといったエンターテイメント系のコンテンツが想像をしやすいが、電力という声もある。ズオラという会社を取り上げて、紹介する。ズオラは「サブスクリプション・エコノミー」を唱える請求管理サービスを提供する会社である。一定金額を都度支払うライセンス式から、月額課金モデルのサブスクリプション式に移行する際に、請求システムが大きく変化する。請求、集金、未収催促といったフェーズに個々対応しなければならなくなる。この変化をスムーズに行う為の請求管理のアウトソース先としてズオラは成長した。同社は、日本における電力自由化に先駆け、ここにサブスクリプション式を各電力会社に提案しようと試みている。

◆サブスクリプション型で変わる企業とユーザーの付き合い方
 サブスクリプション型の特徴は、サービス導入がし易い点にある。1年で6万円のソフトウェアをいきなり購入するよりも、月に5000円と聞けば、手を出せるユーザーも出てくるかもしれない。また、Apple Musicは最初の期間を無料で提供しており、導入のハードルを下げているのではないか。企業とユーザーの関係性も、継続的な付き合いを前提に成立する為、よりブランディングや向き合い方が重要視されてくるだろう。今後、日本でも増える傾向にあるサブスクリプション型に注目だ。

Text by 山田俊輔