アップルウォッチよりクール?80年代風のカシオ計算機腕時計 米アマゾンでも高評価
米アップルが今春発売した「アップルウォッチ」は、早くもスマートウォッチという新分野を切り開いている。ライバルのGoogleもスマートウォッチ向けOS「Andorid Wear」を開発、各社が次々とこれを搭載した時計を発売している。そのなかで、日本の時計メーカー、カシオもスマートウォッチ市場に参入しようとしている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)が報じている。「腕時計でもあるスマート端末というより、スマートを目指す腕時計」になるといい、時計メーカーとしてのノウハウを注ぎ込んでライバルとの差別化を目指す。
一方で、スマートウォッチに懐疑的な層の間では、同じカシオ製のクラシックな「電卓つき腕時計」がリバイバル・ブームになっているようだ。米テック系サイト『Re/code』が、米Amazonのレビューの高評価を伝えている。
◆時計メーカーとしてのノウハウを生かした男性向けレジャーウォッチ
WSJによれば、カシオが開発中のスマートウォッチは、「腕時計メーカーとしてのノウハウを活用し、使いやすさと耐久性を求める大衆市場の需要を見据えた」ものだという。同社では先週、創業メンバーの樫尾4兄弟の一人、樫尾和雄氏が会長に退き、長男の和宏氏が社長に昇格した。カシオのスマートウォッチは、新社長肝いりの社運を賭けた商品となる。
同社ではこれまでも、スケジュール管理や心拍数モニター、通信機能などのついた腕時計を開発してきた。しかし、それらが商業的成功を収めたとは言いがたい。和宏氏はWSJに対し、「過去でいうと、奇をてらって出して売れないとやめるという繰り返しの部分も正直あったと思う」と告白。その上で、現在は「時計としての完成度をきっちりと、壊れにくい、はめやすい、使いやすい装着感の中でスマートウォッチを実現していきたいと思っている」と語った。
和宏氏がWSJに明かしたところによると、カシオのスマートウォッチは、アップルウォッチの売れ筋価格帯の5万円程度に近いものになりそうだ。ターゲットは男性で、機能と外観の両面でアウトドアスポーツやレジャー向けを想定しているという。来年3月末までに日米で発売する計画だ。WSJは、これらの情報を踏まえたうえで、「アップルが独占するスマートウォッチ市場には新規参入者が相次いでおり、カシオは厳しい競争にさらされる見通しだ」とまとめている。
◆アップルウォッチよりクールな『カシオ計算機腕時計』
一方、『Re/Code』が注目するのは、“80年代スタイル”のカシオの電卓付き腕時計だ。同メディアの記者が時計マニアの友人の誕生日プレゼントのために米Amazonで「カシオ計算機腕時計(Casio calculator watch)」と検索すると、何10種類もヒットしたという。ほとんどが15ドルから20ドルの価格帯で、筆者は『Casio CA53W calculator watch』という、80年代のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公、マーティーがつけていたモデルの後継機種を選んだ。
筆者が驚いたのは、「アップルウォッチに対して、ほとんどがポジティブなレビューで埋め尽くされていた」ことだ。そのいくつかが紹介されている。
・夫はアップルウォッチを欲しがっている。でも、私はバカバカしくて高すぎると思う。アップルウォッチとこれは同じだと夫にプレゼントした。驚いたことに彼はとてもこの時計を気に入った。
・アップルウォッチより良い!この時計には4つのキラーアプリが備わっている。時刻、アラーム、ストップウォッチと計算機だ。
・アップルウォッチよりもクールだ。実際、何人かに「それはアップルウォッチか」と聞かれた。私は「違う。これは80年代の計算機時計だ」と答えた。すると彼らは言った。「もっとクールじゃないか!」
一方、不満点に挙げられているのは「バックライトがないこと」「防水(Waterproof)ではなく、耐水(Water-resistant)であること」だという。それを置いても、ネタ混じりの側面があるとはいえ、「コイン電池一つで2年間動き続ける『Made in USA』のこの時計に勝るものはないだろう」と、筆者は書いている。
◆アップルウォッチはソフトウェア・アップデートで対抗
カシオの『CA53W』だが、日本のAmazonでも海外モデルと銘打って逆輸入品が2980円で売られている。こちらの総合評価も5点中4.5点(7月3日時点、31件)と高い。5点をつけているレビュアーの一人は、「今までは電卓を探しまわったり、スマホやタブレットのアプリをワザワザ開いたり・・・と、ちょっと不便を感じていました」と、すぐに電卓にアクセスできる本製品を推し、「私もCASIOさんに負けないような世界に誇れる作品を作りたいと思います!」と絶賛している。このレビュアーは、もし生産中止になるようなら「10本くらい買いだめします」とも書いている。
一方、アップルは、6月8日の年次開発者会議で、アップルウォッチの次期ソフトウェア・アップデート「watchOS 2」を早々と発表(今秋リリース予定)し、ライバルの追随を牽制している。これを詳報する『CNET Japan』は、応答速度の改善やアプリ開発がしやすくなることを最大の進化ポイントに挙げており、「真のキラーアプリが生まれる環境が整った」としている。そうしたOSの強化により、アップルウォッチは今秋には「全く新しい製品に感じられるかもしれない」とし、「皆が最初から求めていたApple Watchが現実のものになるかもしれない」と記している。