“脱・画一人事” トヨタ初の外国人副社長、女性役員…多様性重視に海外も注目
いまだ終身雇用が中心で、幹部は新入社員からのたたき上げが主流の日本企業。そのイメージを、日本を代表する自動車メーカー、トヨタが打ち破ろうとしている。4日、同社は4月からの役員体制の変更を発表し、初の外国人副社長を始め、多様な人材を登用する方針を打ち出した。
◆新副社長は日本人よりトヨタ通
トヨタの80年近い歴史の中で初めての外国人副社長となるのは、現欧州本部長のディディエ・ルロワ氏だ。ルロワ氏は16年間ルノーに勤務した後、1988年にトヨタに入社。順調に昇進を重ね、欧州トヨタが深刻な不採算に陥った2010年からヨーロッパ事業を任され、以来業績回復に貢献してきた、とフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は紹介している。
元トヨタ幹部は、ルロワ氏を「多くの日本人社員よりトヨタをよく知る人物」と述べ、今回の昇進は、「トヨタが、会社を深く理解する、日本人以外の人材を育ててきたことの表れだ」と評価したという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。
◆可能性を広げる人材登用
2009年に豊田章男氏が社長に就任して以来、トヨタは徐々に画一的なマネージメントから距離を置くようになった、とニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は述べる。新人事では、「多様な背景を持つ人々による議論から、新しいアイデアやイノベーションの可能性が広がる という観点に基づき、海外事業体出身の人材を積極的に登用」すると発表し、グローバル化の流れに沿って、男性、生え抜き中心の登用から舵を切ったようだ。
新役員体制の中でルロワ氏とともに注目を集めたのは、北米トヨタのグループ広報チーフ、ジュリー・ハンプ氏だ。ハンプ氏はアメリカ人で、2012年にペプシコからトヨタに入社。4月よりトヨタ初の外国人女性役員として、渉外広報業務を統括することになる。FTは、この人事が女性の管理職登用促進を目指す、安倍政権の「ウーマノミクス」に応えたものだと述べている。
米国トヨタ自動車販売の上級副社長であるクリストファー・レイノルズ氏も、アフリカ系アメリカ人としてはこれまでで最高位となる、常務役員に就任する。WSJは、レイノルズ氏はアメリカでのトヨタ車の「意図せぬ急加速」問題で、最高法務責任者として、米司法省との和解に携わった人物と紹介している。
トヨタはまた、グループ企業社員や工場出身者を役員に登用するなど、多様な国内人材の活用も進めている(WSJ)。
◆日本企業の人材多様化はまだまだ
WSJは、日本株式会社は外国人役員登用という小さな波を経験してきたとし、日産のカルロス・ゴーン社長や武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長の例を挙げている。しかし、このような例はごくまれだと同紙は指摘。政府系のシンクタンクが3400社の日本の主要企業に行なった調査によれば、99%の企業に外国人役員はいないという。
グローバル化の流れを受けたトヨタの多様性を重んじる方針が、他の日本企業にも影響するのか。今後の流れに注目したい。