日本の電気自動車充電スタンド、ガソリンスタンドより多い!? 「数字のマジック」と海外報道

 日本全国の電気自動車の充電スタンドの数が、ガソリンスタンドを上回ったことが日産の調査で分かった。それによれば、日本にある公共・家庭用の充電スタンドは約4万ヶ所にまで急増。それに対し、閉店も目立っているガソリンスタンドは約3万4000ヶ所だという。ブルームバーグが報じている。

◆充電インフラの拡大は電気自動車普及に不可欠
 ブルームバーグは、この数字について、「電気自動車が世に送り出されてからの比較的短い期間で、それをサポートするインフラが、石油産業が何十年もかけて築いてきたものよりも大きくなったことを示す」と記す。そして、充電ネットワークの拡大により、電気自動車の購買意欲の妨げとなってきた“電池切れ”の不安が徐々に少なくなっていくだろう、としている。

 日産のジョゼフ・ピーター最高財務責任者(CFO)は、「充電インフラの開発は、持続的に市場を拡大するための重要な要素だ」と、この数字を発表した記者会見で語った。

 また、ブルームバーグは、「電気自動車のサポートサービスも充実しつつある」と記す。全世界の充電スタンドのデータベース『オープン・チャージ・マップ』がその一例だ。モバイル・アプリと連携して、GPSを使ってドライバーに最も近いスタンドに誘導するナビゲーション機能もあるという。

◆米でも充電ネットワーク拡大の動き
 一方、アメリカには現在、公共の充電スタンドは9000ヶ所しかないという。しかし、ネットワーク拡大の動きは活発になってきているようだ。

 米電気自動車メーカーのテスラ・モーターズは、既に自前のネットワークを展開しており、今も拡大中だ。今年1月には、BMWとフォルクスワーゲンも米国企業の充電スタンドネットワーク開発計画に参加を表明。西海岸のポートランド―サンディエゴ間と東海岸のボストン―ワシントン間に、それぞれ100ヶ所程度の急速充電器を設置する計画だという。

 公共事業体主導の計画も広がっている。ミズーリ州・カンサスシティ周辺では、今年半ばまでに1000ヶ所以上の充電ネットワークを作る計画がある。しかも、最初の2年間は無料で一般に提供されるという。カリフォルニア州でも今月9日、5年間で2万5000の充電スタンドを作る計画が当局に申請された(ブルームバーグ)。

◆「“売らんがため”の数字のマジック」との懐疑的な見方も
 このニュースに、自動車関連メディアも反応している。自動車専門ニュースサイト『Auto World News』は、「政府と歩調を合わせて消費者をハイブリッド車や電気自動車に誘引しようとしている自動車メーカーにとって、素晴らしいニュースだ」と報じている。

 一方、テクノロジー関連のニュースサイト『Techaeris』は、日産が発表した数字は「話半分」に捉えた方がいいと懐疑的だ。このニュースを報じる記事で、自社の電気自動車『リーフ』の販売に力を入れている日産が、営業的に有利になるように、ある程度恣意的に「充電スタンド4万」「ガソリンスタンド3万4000」という数字を「クリエイトした」という見方を示している。

 同メディアが着目するのは、4万の充電スタンドの中には、個人宅にある充電機器が多く含まれていることだ。さらに、充電スタンドの多くには充電設備が1基しかないのに対し、ほとんどのガソリンスタンドには複数台のガソリンポンプがあるが、日産の調査では、ポンプの数に関わらずガソリンスタンド数は1ヶ所で「1」とカウントされている。こうした“数字のマジック”に惑わされてはいけない、と同メディアは主張する。とはいえ、大筋では「この日本の数字は、電気自動車の普及にとっては良い兆候だ」とも記している。

Text by NewSphere 編集部