ソニー復活? 業績上方修正でストップ高 吉田CFOの手腕に米コラムニスト着目

 ソニーは4日、2014年度第3四半期(10~12月期)の業績と、2014年度通期の業績見通しを発表した。前回10月に発表された見通しでは、通期の営業損益は400億円の赤字とみられていたところ、200億円の黒字見込みとなった。第3四半期は、前年同期に比べ営業利益が2倍、純利益が3倍超となり、好調ぶりを示した。発表翌日の5日、ソニーの株価は大きく上昇し、一時、ストップ高の3269円を付けた。

◆ソニー製品の売れ行きが回復
 ソニーは、業績が好調だった理由として、円安ドル高の好影響、スマートフォン、スマートフォンのカメラに用いられるイメージセンサー、「プレイステーション4(PS4)」の販売が好調だったことを業績発表文で挙げた。PS4の販売台数は10~12月、640万台に上った。

 『ブルームバーグ・ビュー』のコラムニスト、ウィリアム・ペセック氏によると、ソニーのイメージセンサーは、自社のXperiaとアップルのiPhoneのカメラで使用されているという。iPhoneの販売台数が10~12月期、5103万台にも及んだことが好調を支えたのかもしれない。ソニーによると、イメージセンサーを取り扱うデバイス事業では、外部顧客に対する売上高が前年同期比でおよそ1.5倍になったという。ペセック氏は、この地味なセンサーが、収益に大きく貢献した、と語った。

◆構造改革の成果が表れ始めている
 ソニーの株価が3000円を超えたのは、2011年3月の東日本大震災の直前以来となる。震災後、株価は大きく下落し、2012年11月には772円の上場来安値を付けた。

 2014年度通期で、営業利益の見通しは黒字になったが、純損益の見通しは1700億円の赤字とされた。前回の見通しでは2300億円の赤字だったので、大幅に改善してはいるが、まだ巨額の赤字が見込まれている。それでも投資家から好反応をもって迎えられたのは、ソニーが多年続けてきた構造改革の成果が表れ始めている、との期待感のためだ。

 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が伝えるところによると、これまでソニーは、過去10年間で3万3千人のリストラを断行した。昨年にはパソコン事業を売却し、テレビ事業を分社化した。

 ペセック氏は、吉田憲一郎氏が昨年4月に最高財務責任者(CFO)に抜てきされて以来、構造改革に手腕を発揮してきたことを、業績回復の主因に挙げている。吉田CFOが行ったスリム化、経営の絞り込みについて、ソニーに新たなリアリズムを注ぎ込んだ、と語った。これまでソニーはずっと、消費者に、家庭用電子機器で売れる可能性のあるものは何でも売り込もうと懸命だった。これからのソニーは、自分たちが上手にやれることに重点を置く会社となる、と氏は語る。

 ただし氏は、ソニーが真に回復を果たすためには、「第2のウォークマン」とも言うべき、革新的な新製品の開発が必要だとも指摘した。

◆サイバー攻撃の影響は?
 第3四半期の業績は、正確には業績見通しとして発表された。ソニーの映画部門である米子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、昨年11月、大規模なサイバー攻撃を受けた影響で、その期の決算が完了していないためだ。よって一部、確定値ではなく、暫定値が含まれている。

 インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(INYT)紙は、この攻撃のせいでかかった費用にもかかわらずソニーの業績見通しが改善した、と伝えた。FT紙によると、ソニーは映画事業で、第3四半期、サイバー攻撃関連の調査、復旧費用として1500万ドル(18億円)を計上した。第3四半期の営業利益は、前年同期比90%減の24億円となる見通しだという。被害額は3500万ドル(41億円)にまで膨れ上がるとソニーは予想しているという。ただし、一部は保険によって補償されるとのことだ。

◆スマートフォン事業で苦戦
 INYT紙、FT紙は、ソニーがスマートフォン事業で苦戦していることを伝えている。中国のシャオミ、ファーウェイ、インドのマイクロマックスといった会社に、中低価格帯でシェアを圧迫されているためである。FT紙によると、ソニーはスマートフォン事業の年間売上目標を3四半期連続で下方修正した。INYT紙によると、2013年度ではスマートフォン事業がソニーで最も収益の高い分野だったという。

 ソニーはスマートフォン事業の見直しとして人員削減を進める考えだ。現在7100人いる人員のうち、今年度内に中国で1000人、来年度はヨーロッパ・アジアで1100人の人員削減を行うという。

 一方、長らく不振にあえいでいたテレビ事業は、3四半期連続での黒字を達成したという。今後、通年でも黒字を達成できれば、11年ぶりとなる、とFT紙は伝えた。

Text by NewSphere 編集部