トヨタ、3年連続販売世界一も陥落間近? “拡大よりも収益性”重視へ

 ライバルのフォルクスワーゲンAG(VW)を抑え、2014年もトヨタが3年連続で販売台数世界一となった。ライバル各社が拡大路線を進むなか、数字に過度に固執しないトヨタの堅実な経営に、海外メディアが注目する。

◆北米絶好調
 ブルームバーグによれば、2014年のトヨタ(日野自動車、ダイハツ工業を含む)の世界での自動車販売台数は、3%アップの1023万台。ライバルのVW(大型トラック部門を含む)は4.2%増えて1014万台、ゼネラルモーターズ(GM)は2.1%アップの992万台となった。

 トヨタのセールスを牽引したのは、昨年から6.2%アップして237万台を売ったアメリカ市場だ。5種のSUV(スポーツ用多目的車)の販売が好調で、2種しか投入しなかったVWの4倍のセールスを記録したとブルームバーグは伝える。今やレクサスを含むトヨタのセールスの25%は、アメリカで生み出されている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。

◆来年の販売台数は減る予測
 好調が続くトヨタだが、実は2015年の販売台数は1%減の1015台と予測している。理由の一つとして、昨年は消費増税前の駆け込み需要があったが、今年は日本国内の販売が低迷することが挙げられる(ブルームバーグ)。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、新興国の景気減速も、販売台数に影響すると見ている。

 もうひとつの理由は、中国での販売が伸び悩んでいること。トヨタは中国市場では昨年12.5%アップの103万台を売り上げたが、目標の110万台を下回り、販売規模では、VWとGMの3分の1以下だ。景気減速が懸念されるとはいえ、まだ8%近くの成長が見込まれる中国市場で、さらに現地工場を建設し、販売拡大を目指すVWとGMとは対照的に、トヨタの今年の目標は、昨年と同じ110万台のままである(ブルームバーグ)。

 CLSA証券のクリストファー・リッチャー氏は、今後の世界販売の見通しとして、「ある時点でVWがトヨタを抜き去ると思う。単に中国でVWがトヨタより格段に強いという理由からだ」と述べている(WSJ)。

◆拡大路線から収益性重視に転換
 一方、ムーディーズ・インベスターズ・サービスのアナリスト、ペギー・フルサカ氏は、「トヨタは数字を追うより、収益性を維持することにより関心がある。だからこの先トヨタがVWに販売台数で負けても、驚きではない」と述べ、1位になるのがトヨタの目標ではないと指摘する。

 FTは、アメリカで数年前に起きた意図せぬ急加速問題をきっかけに、トヨタの視点は猛烈な拡大よりも収益性と品質に移ったと指摘。また、豊田章男社長は生産拡大には慎重で、既存の工場の生産能力を最大化することにフォーカスし、2016年までは新工場建設を行わないとしていると述べる。

 WSJは、トヨタのドル箱、アメリカ市場での販売コストの上昇を指摘。また原油価格の下落でSUV需要が復活する今、供給が需要についていけるのかという懸念も示すが、FTは、円安というプラス材料は収益アップに貢献すると述べる。

 苦戦が続く日本企業が多いなか、安定した経営を続けるトヨタ。今年もその活躍を期待したい。

Text by NewSphere 編集部