“楽観的過ぎた”住商、米シェールオイル開発等で2400億円損失 異例の事態に識者驚き
住友商事は29日、アメリカのシェールオイル開発等で投資回収が見込めないとして、約2400億円の損失が発生する見通しと発表した。2015年3月期の連結決算には損失のうち約1500億円を計上し、純損益が約300億円の赤字(前年同期は1116億円の黒字)になる見込み。連結純利益予想も従来の2500億円から100億円に修正した。
同社の株は30日、12.1%下落し、1996年7月に発生した同社社員による銅地金不正取引事件以来の下落幅となった、とロイターは伝えている。
【リスク管理の甘さ】
住友商事に最大の損失をもたらしたのは、テキサス州のシェールオイル開発である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、同社は2012年8月、本プロジェクトの30%の権利を約13.7億ドルで購入した。取得後の試掘で「想定した以上に地下の油層が複雑で採掘コストがかかる」(中村邦晴社長)ことが分かり、売却決定に至ったとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は報じている。
「我々は投資決定の際楽観的過ぎた」と中村社長は記者会見で語り、進退については、会社を損失から立ち直らせることが先決と語ったという。
住友商事の巨額の損失はマーケットウォッチャーを驚かせた。SMBC日興証券のアナリストは、予想より少ない埋蔵量のためにエネルギープロジェクトから撤退する事はめったにないと指摘し、「ここまで損失が膨らむまで、なぜ撤退せずにいたのかに驚かされた」とWSJに語っている。
住友商事は地理的問題を2013年秋に認識していたが、詳細なデータを収集する一方で採掘を続けていたため、売却決定に至るまで1年かかった、とWSJは報じている。
リスク管理の甘さを指摘する声もある。FTによると、格付投資情報センターは同社のリスク管理がうまく働いていたとは言えないとし、格付けをAAマイナスに引き下げ、「安定的」から「ネガティブ」に変更した。
【資源価格の低迷】
住友の巨額損失の背景には、鉄鉱石や石炭などの資源価格の急落も指摘される。
ロイターによると、最大の購入者である中国の需要が緩んだのと同時に低価格の採掘業者が生産を拡大したため、鉄鉱石の供給が過剰となっている。今年の鉄鉱石価格は42%以上下落している。月曜日、中国向け鉄鉱石の価格は1トン当たり77.70ドルで、2009年9月以来の下落となった、とSteel Indexは伝えている。
住友は、鉄鉱石価格の下落により、ブラジルの鉄鉱石プロジェクトの拡大が延期されたために500億円の損失を見込んでいる。また、石炭価格の低迷のため、オーストラリアの炭鉱も1月末に閉鎖し、300億円の損失を見込む。
住友の巨額損失公表に伴い、三菱商事や三井物産、丸紅などの商社株も下落している。資源価格の下落が商社セクター全体に損失をもたらす可能性が危惧されている、とロイターは伝える。
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