「アップル・ペイ」、日本だけ反応イマイチ…「おサイフケータイ」浸透で新味なしか

 アップルが今週、モバイル決済サービスである「アップル・ペイ」を発表した。競合企業の脅威となり得るのか、海外メディアが注目している。

【日本のお財布ケータイ】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、すでにNTTドコモがモバイル決済サービスを提供している日本での反応はいまひとつだと報じている。2004年にから開始した「おサイフケータイ」は、3300万台を突破し、180万ヶ所の小売店で利用できるという。

 事情に詳しい関係者によると、おサイフケータイはNFC(近距離無線通信)のType Cを使用しているのに対し、アップルはType AかBを使用することになると見られている(WSJ)。同紙は、最終的にアップルがモバイル決済の世界標準を定めることになれば、日本は世界に先駆けて新テクノロジーを実用化していたにも関わらず、また地位を明け渡すことになる、と報じた。

 ドコモはなぜモバイル決済を世界に広げなかったのか。同社のスポークスマンによると、海外進出は考えていたが、当時インフラの設定コストを負担してくれる海外企業がなかったという(WSJ)。

 サービス導入後数年は順調で、JR東日本、セブンアンドアイ、イオンなどの大手小売店と提携した。しかし2008年にアップルのiPhoneが発売されてからは伸び悩んだ。6月末には、ドコモのお財布ケータイ利用者は前年比で8%減少しているという。

【モバイル決済が目指すもの】
 アップルがモバイル決済事業を発表したことで競合となったペイパルのグローバルディレクターであるジョン・ラン氏は、アップル・ペイの目的が支払いを今までより若干早くするためであるとすれば、あまり価値のないサービスだと指摘した。

 Channel News Asiaのインタビューでラン氏は、消費者は、支払いが迅速であることよりもまず支払わなくて済むことを望んでおり、「モバイル決済が目指すべきは、支払い工程を“見えなく”すること」、だと主張する。ペイパルは、登録した決済方法や過去の購入履歴などの情報を店舗に提供することで、利用者は支払い工程を一切しなくて済むようになる。それが“見えない”支払い工程だと言う。

 オンライン決済はペイパルなど多数の企業がひしめくため、アップルは今後、主にオフラインでのモバイル決済に注力していく可能性が高い。また、現在アンドロイドが主流のEU、中国、ラテンアメリカ、アジア各国では、アップル・ペイを普及させにくい。以上ふまえて、同メディアは、アップル・ペイがペイパルの事業に影響するとは考えにくい、と見ている。

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Text by NewSphere 編集部