Tモバ断念の孫社長、次の一手は? 新しい買収かそれとも… 海外メディア注目
ソフトバンクの米国子会社で、携帯電話・同国3位のスプリントが、同4位のTモバイルUSの買収を断念した。海外各紙は、投資家の動きや孫正義氏の今後の展開について報じている。
【米規制当局が買収を嫌った】
米規制当局は、スプリントとTモバイルの買収合併について難色を示していた。米連邦通信委員会(FCC)のトム・ ウィーラー委員長は、「4社の通信企業があることがアメリカの消費者にとって好ましい」と述べた。「スプリントは、これで、積極的な競争のための努力に焦点をあてることになった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)
同紙によると、オバマ政権は企業の買収合併を好まないが、ほとんどの分野では既に大きな買収合併は完了してしまっている。しかし、通信業界は別だという。同業界では司法省とFCCの認可が必要だ。今回の買収が難航したのはそのためだとしている。規制当局は、米国内の通信市場は統合が十分にすすんでいて、これ以上必要ないと考えているようだ。
スプリントとTモバイル合併については、当局の担当者がスプリント幹部に会い、非常に疑問だと率直に伝えていた。結局、この疑問が払しょくされることはなかった。スプリント側は主張を通そうと、当局関係者と非公式の話し合いを持ったりしようだ。しかし、FCC関係者によると、「(買収のための)ロビー活動は、大騒ぎになり怒りを買っただけだった。何の意味もなく、誰も説得することができなかった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)という。
【買収断念にほっとする投資家】
投資家たちは、ソフトバンクがTモバイル買収をあきらめたことに安堵した、とブルームバーグは報じている。
CMAによると、CDS(債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たすデリバティブ契約)スプレッドは6日、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01)低下し160bpとなった。2013年12月に合併の話が出てから、最低の数字だ。1月27日には、過去1年で最も高い227にまで危険が上昇していた(ブルームバーグ)。
米携帯市場1位のベライゾン、2位のAT&Tに対抗するため、昨年、Tモバイルを買収しようという孫氏の見積もりは、320億ドル必要だったと関係者は話す。米有力格付け機関ムーディーズは、合併で750億ドルの負債と、回収の可能性が低いとみなされるジャンク格の債権を抱えることになるだろうと警告していた。
BNPパリバ証券の野川久芳氏は、「金が外に流れ出さないということだが、それが(買収を断念するべき)最大の理由だ」と撤退を支持し、「会社がより多くの負債を背負うことに危機感が薄い」(ブルームバーグ)とソフトバンクの姿勢を批判した。
スプリントのための借り入れは、ソフトバンク全体の負債を9.17兆円(3月31日時点)にまで押し上げている。その2年前には2.14兆円だった。
BGCパートナーズのアミール・アンバーザデ氏は、買収断念は損失を大幅に減らすことになる、と評価している。「次の買収を考えるべきではない」「借入金の割合があまりにも大きすぎる」(ブルームバーグ)
【孫氏の野望は後退しない】
FCCや政府関係者が一斉に反対していたとはいえ、買収が失敗したことは驚きだ、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
同紙によると、孫氏は今、米市場でスプリントを一流企業に育て、昨年の同社への216億ドルもの支出を正当化するため、2つの選択に迫られているという。それは、Tモバイルあるいは他社に、新たな買収をしかけるか、ソフトバンクが日本国内で成功を収めたように、積極的な価格戦略でスプリントの組織を拡大することに取り組むかだ。どちらにせよ、今回のTモバイル買収の失敗は、しばしば孫氏が口にするソフトバンクを「世界一の企業に」という漠然とした野心を妨げるものだ。
ただ、孫氏は簡単にはあきらめないだろう、と同紙はみている。孫氏はこれまで、総務省や彼自身までも議論の的として晒すことで、通信事業に関する論争を盛り上げてきた。このことは、Tモバイル買収の望みがまだあるということかもしれないというのだ。同紙は、米規制当局と政治家たちの反対についての「環境は間違いなく変わった」(ロイター)というソフトバンク幹部の発言を取り上げている。
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