“デフレ後”経営者、周辺事業の分社化進めるべき 新浪サントリー次期社長主張に海外注目
今年10月より、サントリーホールディングス社長として、現ローソン会長の新浪剛史氏の就任が内定している。創業116年目となるサントリーにとって、創業家以外から社長が誕生するのは、これが初めてだ。新浪氏は、日本の企業は今、新たなタイプの経営者を必要としている、と語っている。海外メディアはこれに注目し、報じた。
【今後、海外での事業拡大を期するサントリーが、新浪氏を求めた】
新浪氏は2002年、現在コンビニエンスストア売上高国内第2位のローソンの社長に就任し、12年間トップを務めた。氏は内閣府の審議会、税制調査会の特別委員でもあり、成長戦略について調査審議を行う「産業競争力会議」の議員でもある。同会議の議長は総理大臣であり、議員は総理が指名する。
サントリーは国内有数の飲料メーカーグループであるが、近年は、海外での企業買収を通じた事業展開に力を注いでいる。これは、人口減少による国内市場の先細りを考慮してのことだと言われている。今年5月には、米蒸留酒最大手ビーム社を約1兆6千億円で買収し、話題を呼んだ。『スピリッツ・ビジネス』は、サントリーはこの買収によって、国際企業へと飛躍的な発展を遂げた、と評している。
創業家から社長を出すというこれまでの慣習を打ち破り、サントリーが外部の人材である新浪氏を社長として任命したのは、海外事業をより強化することを望んでいるためだ。現会長兼社長の佐治信忠氏は、今後、会長職に専念するが、新浪氏との二人三脚体制下で、大型の企業買収が再びありうるとほのめかしたという。
【今、日本企業が必要としているリーダー像とは?】
新浪氏は23日、ニューヨークの日本協会で講演を行った。氏はそこで、日本の企業は、外部からの新鮮な、才能ある人材を経営陣に迎える必要があると語った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「日本リアルタイム」は、これは自分のことを語っているのだと示唆する。新浪氏は、時勢は変わりつつあるが、現在の日本企業の役員の考え方では、必ずしもそれについていけていない、と語っている。
ブルームバーグは、同じ席で新浪氏が、イノベーションを阻んできた15年間のデフレから日本が抜け出す今、日本の企業には、リスクを取ることをいとわない、これまでと異なるタイプの経営者が必要だ、と語ったことを伝える。
これまで大多数のCEOは、何か新しいことをして事業を営むことではなく、コスト削減に長けているために抜擢された。しかし、そのような人たちは、ビジネスのチャンスがもっとたくさんある現今の状況下では、うまく経営ができない、と氏は語る。
【氏が示す日本企業の今後のあるべき姿とは?】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、新浪氏が挙げる、経営者が今後取るべきリスクの一例を紹介している。それは、会社からコア事業ではない事業を積極的に切り離し、子会社化することである。日本の会社は、あまりにしばしば、そのような事業をたくさん抱え込まされている、と氏は語る。
このようにすれば、おそらく、企業収益は増大し、さらに日本経済の活力が増すことになるだろう、と氏は主張する。小規模会社を創設することになるだろうが、そういった会社は、より迅速に行動できる。また、他のよりふさわしい企業がこれを買収することも可能となる。
さらに、この措置によって、雇用の流動性も増大すると氏は主張している。日本の労働人口の約3割は、大企業に雇用されているが、大企業は労働法によってがんじがらめにされている。それ以外の人の大部分は、小規模な会社に雇用されているが、そういった会社では、雇用・解雇の面で、大企業より自由度が高い、と氏は述べている。