FB、ネット金融サービスに参入か? インフラ化加速の新事業に英紙注目
既存の銀行のシステムとは一線を画した、送金や支払い、貯蓄といったインターネット上の金融サービスが今、世界で急成長している。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)などの海外メディアは、Facebookの金融市場参入の動きや、中国のインターネット・ファイナンス市場の加熱ぶりを報じている。
【Facebookも金融サービスに参入】
SNS大手のFacebookが間もなく、アイルランドで電子マネーの送金などを可能にする新サービスの認可を受ける見込みだ。FBのプラットフォームに電子マネーを貯め、そこから支払いや送金ができるものだという。13日付のFT紙は、「アイルランドを皮切りに、やがてヨーロッパ中に広まるだろう」などと報じた。
このプロジェクトはショーン・ライアン副社長の肝入りで進められているという。FT紙は、同社はこうしたプロジェクトを世界的に推し進めることで、「収益のほとんどを広告収入に頼る現行のビジネスモデルからの脱却を図っている」とみている。
【狙いは、ヨーロッパで拡大する「移民の送金」市場か】
アフリカなどからの移民が母国に送金するケースが多いイギリスでは、既にオンラインの国際送金サービスが急成長している。12日付のFT紙の記事によれば、実店舗の窓口やATMを利用した銀行などの従来型の送金システムに比べ、ランニングコストが低いオンライン・サービスは手数料を大幅に低く設定できる。そのため、ロンドンを拠点にする複数の新興ベンチャー企業が運営する送金システムが、移民や外国人労働者を中心に高い支持を得ているという。
そうしたベンチャーの一つ『WorldRemit』の創設者、イスマイル・アーメッド氏は、自身がソマリアからの移民だ。FT紙の記事によると、学生時代にアルバイト代を母国に送金した際の経験が、現在のビジネスの原点になったという。オンラインシステムがなかった当時は、住んでいたケント州から「送金のためにロンドンまで旅をしなければならなかった。しかも入金までに何日もかかり、(その交通費と手数料で)賃金の10%が飛んだ」と話す。
アーメッド氏のWorldRemitを使えば、モバイル端末から自宅などに居ながらにして世界中に送金できる。手数料も日本円にして130円程度と既存のシステムに比べて非常に安価だ。同社は約100ヶ国へ年間約130万回の送金処理をしており、合計送金額は約2億6000万ポンド(約442億円)だという。
なおロンドンには、これよりも大きい額を動かしている同業他社が複数あり、フェイスブック社はそのうち3社と提携交渉を行っているという。FT紙は、この動きを「Facebookは、移民の送金という拡大中の市場で存在感を強めようとしている」と報じている。
【中国では既にインターネット・ファイナンスが既存市場を上回る】
中国共産党の英語版機関紙『グローバル・タイムズ』は、3月21日付で、中国インターネット企業大手の『アリババグループ』と『テンセント』が提供する金融商品の利用状況に関する世論調査の結果を報じた。それによると、約1000人の回答者のうち、840人がアリババの子会社『アリペイ』の“電子マネー口座”『Yu’ebao』か、テンセントのSNSアプリ『WeChat』に付随する『Licaitong』を利用しているという。
いずれもオンライン上の銀行口座のようなものだ。インターネットショッピングや各種支払い、送金に対応し、既存の銀行に比べて利息が断然高いのが特徴だという。グローバル・タイムズは「銀行の1年間の利息は最大3.3%だが、Yu’ebaoのようなインターネット口座では7日ごとに6%程度の利息がある」と報じている。
同紙によれば、昨年サービスを開始したYu’ebaoのユーザーは8100万人以上で、預金総額は今年2月末時点で500億元(約8100億円)に達している。これは、中国国内の既存の金融商品の預金額の合計を上回るという。Licaitongも、富裕層の利用率の高さやSNSとの連動など機能性の高さから、将来はYu’ebaoを脅かす勢いだと、グローバル・タイムズは報じている。