孫社長は“救世主”になるか? 米携帯4位買収、超高速通信網整備への意欲に米誌も期待
ソフトバンクの孫正義社長は11日、米PBS(日本のNHKに相当)のテレビ番組「チャーリー・ローズ」に出演し、米携帯電話業界4位のTモバイルUS(T社)を獲得する必要性を改めて示した。T社は欧州大手ドイツテレコムの子会社。
【なぜTモバイルUSを買収?】
孫社長は、以前からT社の買収に意欲を示していた。既に買収したスプリント(業界3位)の規模だけでは競争に勝ち抜くのは難しいと考えており、4位のT社を傘下におさめることで、2強のAT&Tとベライゾンと、価格・技術面で「真の競争」に持ち込めると強調し、アメリカ市民に訴えた。
フォーブス誌は、孫社長の買収姿勢に対し、低迷している携帯電話業界をの「救世主」として期待している、と好意的に報じている。
ただ、過去にもT社の買収案はあった。約3年前AT&TがT社を買収しようとした際、「無線通信業者が4社から3社に減る」との理由で米連邦通信委員会(FCC)は反対しており、今回の件にも慎重な姿勢を示している。同様に米司法省も難色を示している。
【ヘビー級の戦い 日本の約10年前と酷似?】
アメリカの携帯電話業界は2強2弱の状況だ。『CNN Money』によると、契約者数はAT&Tが1.1億人、ベライゾンが1.03億人、スプリントが5400万人、TモバイルUSが4700万人であり、2弱の合併が実現すれば1.01億人となり、2強と十分対抗することができると報じた。巨人3社による「ヘビー級の戦い」が幕を開けることになる。
これはまるで、10年ほど前の日本の状況と似ている。当時、NTTドコモとauの2強に対し、孫社長はボーダフォンの買収を機に、価格戦争を巻き起こし、ユーザー数を次々と獲得しシェアを年々伸ばした。ソフトバンクは、2番手のauの地位を脅かすまでに成長している。この経験をアメリカでも活かすことができるかにおいても関心を持たれている。
【アメリカは“つながらない”】
孫社長は「アメリカの回線速度はよくなく、訪米するたびにつながりの悪さを感じさせる」と発言。フォーブス誌は孫社長のことを猪突猛進のアントレプレナーと紹介している一方で、回線の悪さは認めている。
その理由に、通信網の整備が遅れていることがあげられる。国土が広大で人口密度が低いアメリカで、通信網を十分に整備するには莫大なコストがかかる。孫社長の戦略のポイントの一つである超高速通信網を整備する技術をもっているところにも大きなアドバンテージがあるとされる。
ただ、同誌によると、アメリカは4Gのネットワークとデバイスの普及率は世界一であり、95%以上のアメリカ人は4GLTEに接続しているという。また、一人当たりのデータ通信料も圧倒的に多く、西欧と比べると2倍以上で、接続速度が世界一速いと言われている韓国より多い。
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