日本の除染・廃炉技術が世界をリードする 新たなビジネスの可能性に海外メディア注目
福島第一原発の事故から3年。日本の除染・廃炉技術に世界の注目が集まっている。海外メディアは、災害を教訓とした新しい技術によって、日本が再び世界をリードする可能性を報じた。
【事故収束に向けての動き】
収束に向けて昨年、政府出資による国際廃炉研究開発機構(IRID)が設置された。原子力発電業者、原発専門の建設業者及び組織を結集し、国内外の組織と連携して廃炉技術に関する研究や開発を推進するのが目的となる。AP通信によると、世界各国から汚染水処理に関するアイディアや技術への資金提供の提案が780件、3機の溶解燃料棒回収への提案が220件寄せられた。
また東京電力は4月、廃炉担当部門を暫定的に「廃炉カンパニー」として分社化することを発表した。AP通信は、将来的には国内外の廃炉事業に従事する組織となり得るだろう、と報じている。学者、大手建設会社、電化製品メーカー、リスク管理会社などの企業が我先にと参加しているという。
【世界が注目する日本のロボット技術】
APはまた、東芝、三菱重工、日立を始めとする日本企業が、放射線測定、除染、汚染物質の撤去、損傷の修復などができるロボットを開発し、数機はすでに現場で動員されている、と報じた。
福島第一原発4号機の使用済み核燃料プールでは、科学者が操作するロボットアームを使って燃料取り出し作業を進めている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、昨年11月、遠隔操作のロボットが汚染水漏れを発見し、現在は水漏れ個所を発見しそれを修復する任務に当たっている。
人間のように現場を歩き回り複数の作業をこなすスーパーロボットの登場はないという見解がある一方で、「それぞれ異なる作業に特化したロボットの小部隊が活躍することになる」と、三菱重工の原子力事業本部主席技師、大西献氏は同紙に語っている。
老朽化した原子炉の廃炉は、すべての原子力発電業者が近い将来に直面する課題だ。IRIDの鈴木一弘専務理事によると、「開発されたロボット技術は、損傷の激しい原子炉ばかりでなく通常の廃炉作業にも非常に役立つ」ことが期待される。「技術を活用することによって、作業員の被曝を防ぐばかりでなく、除染の迅速化、コスト削減も実現できる」と、スリーマイル島原発事故の収束作業に携わった経験を持つ米国人専門家レイク・バレット氏は指摘した。
【日本が世界をリードする 海外メディアの見解】
『ギズモード』では、日本では原子力災害が技術界に革新をもたらしており、原子力施設の廃止措置において世界をリードする存在となるだろう、と報じている。
また、ジャパン・タイムズがロボット技術を“高い利益を生み出す商品”と評したことを取り上げて、日本が支払った代価はあまりに大きかったとの見解を示した。
一方で、過去のメキシコ湾原油流出事故や東北地震に伴う大津波の例に見るように、長期的には利益を生み出す技術になる可能性があることにも言及している。希望の兆しとは言い難いまでも、史上最悪の災害の副産物として興味深い、と締めくくった。
APは、いまなお問題が山積する福島第一原発においてビジネスチャンスとはにわかには信じ難いとした上で、除染ロボットを始めとする技術や経験は将来的に廃炉されることになる原発で役立つことになると指摘した。昨今韓国や中国に押され世界的影響力を失いつつある日本企業にとって、新しいビジネスチャンスとなり得るだろうと予測している。
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