海外紙、「遅すぎた」ソニーの再建計画に厳しい評価 復活の条件をどう分析したか?
ソニーは6日、パソコン事業の売却とテレビ事業の子会社化を核とするエレクトロニクス部門の再編計画を発表した。ソニーの業績悪化をたびたび報じてきた海外メディアも、「ついにソニーが動いた」と、その公式発表を大きく報じている。
【「遅すぎた」「ほぼ意味がない」】
ソニーはこの日、2014年3月期の連結業績予想を昨年10月予想の300億円の黒字から1100億円の赤字に下方修正した。パソコン事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却し、テレビ事業を独立子会社化する再編計画を発表した。
ブルームバーグは、今回の一連の動きをアナリストの言葉を借りて「遅すぎた」と切り捨てた。消費者の関心はモバイル・タブレット端末に移行し、PCマーケットは縮小し続けている。その中にあって、ソニーは事業撤退に至るまで、「その変化の一歩先を行くことはできなかった」としている。テレビ事業に関しても、「今後も収益を上げる展望はない」というアナリストの言葉を強調した。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、テレビ事業の子会社化について「売却の序曲でなければ、ほぼ意味のない動き」と微妙な評価を下す。一方、平井一夫社長は、「現時点では」と前置きしてテレビ事業の売却を否定したが、「複数のオファーがあった」ことは認めているという。
【新生VAIOに期待も】
売却されるのは、VAIOシリーズのノート・デスクトップPCの開発・製造・販売事業だ。ソニーの会見によると、売却は今年7月1日までに完了する予定だ。タイム誌は「売却そのものよりも興味深いのは、VAIOシリーズの今後の行く末だ」とユーザー目線の記事を掲載した。
同誌によると、ソニーはVAIOの製造・販売を今年春の新モデル発表まで継続する。その後、日本産業パートナーズが立ち上げる新会社が、バトンを受ける。新会社は、ソニーが継続する売れ筋のモバイル端末には手を出さず、VAIOの生産・販売に専念する。旧製品のサポートはソニーが継続する。
新会社は、少なくとも当面はVAIOの販売を日本国内に限定する計画だという。同誌は、小型ノートPCなどをリードしたこれまでのソニーの歩みに触れ、「格好いいラップトップ(ノートPC)を求める者は、VAIOが店頭から消えることを惜しむだろう」と記し、今あえてPCビジネスに挑む新会社の今後に注目している。
またニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、買収側の日本産業パートナーズにスポットを当てた記事を掲載した。同社は、以前から再編成で大企業からはじき出された事業の買収を狙ってきたという。中でもPC部門は2002年に設立された同社の歩みの中でも「親しみのある分野だ」としている。
馬上英実社長はVAIOの買収について、「ソニーが積み上げてきた革新的なデザイン技術とノウハウを反映して利益を拡大し、VAIOユーザーの期待に答えたい」とコメントしている。
【カムバックはあるのか】
一方、各紙がソニーの好調要素に挙げるのが、今期ヒット作が見込まれる映画部門、昨年11月に発売されたゲーム機『プレイステーション4』の好調な売れ行きなどだ。この日併せて発表された5000人規模の追加リストラ策も一定の利益改善につながるとみられている。
WSJは、次のように総括する。「ソニーは一応、正しい方向に向いてはいる。再編計画は確実に実行されなければならない。さもなければ、これまで同様、ソニーのカムバックが果たされることはないだろう」