トヨタ、カローラなど6車種の販売を米国で中止 素早いリスクマネジメントに評価の声
トヨタ自動車は、アメリカで販売している6車種について、シートヒーターの素材が安全基準を満たしていないとして、販売を中止した。対象車種は、アバロン、カムリ、シエナ、タコマの13年型と14年型、カローラとタンドラの14年型。トヨタは「この問題に関連した事故の報告はない」と発表している。
今回の措置は、ディーラーに在庫として保管されている約13%にあたる3万6000台が対象となる。現在のところ、すでに対象車種を購入した顧客には、通達を行わないとしている。
【判明した問題と基準】
シートヒーターとは、座席に埋め込まれた電熱線によりシートを温めることができる装備である。今回、トヨタの6車種で、シートヒーターに使われている素材が、米国の内装素材に関するFMVSS 302に適合していないことが、韓国の調査機関で明らかになった。韓国では、米国から輸入した車を基準に適合しているか調査している。
FMVSS 302とは、火災発生時に運転者などの安全性を高めることを狙いとしたもので、素材が着火した後の火災伝播速度を規定している。
【トヨタの素早い対応に評価の声】
韓国の調査機関から連絡をうけたトヨタは、米国運輸省に違反報告を提出し、販売を中止した。この対応に対し、米国のアナリストは、「販売中止は、とても重大で損失の大きい決断だが、トヨタが、顧客の不安を鎮めるために、できる限りの努力をしているのが伺える」と分析。
さらにトヨタは、米国運輸省に、今回の違反は危険性が低く、リコールの必要はない、という請願書を提出する予定だという。
こうしたトヨタの対応の早さは、3年前の苦い経験を繰り返さないためだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。同紙は、3年前トヨタは、レクサスが意図せずに急発進するという苦情にきちんと対応せず、運輸省への報告も遅れたため、販売中止にとどまらず、罰金も科せられたと報道。その後、死亡事故の原因にもあげられ、訴訟をおこされた経験を指摘した。
【今後の行方】
米国運輸省は、現在トヨタから事情を聴いている最中であり、この問題に関するリスクを検証している、という声明を発表した。トヨタからの請願書が届き次第、内容を確認し、判断する予定という。トヨタの訴えが認められれば、問題の素材を交換し、販売を続けることができるが、認められない場合は、当局が調査に乗り出し、リコールを行うことになる。
しかしながら複数のアナリストが、この問題はトヨタの販売にさほど影響を及ぼさないと指摘している。シート―ヒーターは、北部の寒い地域の顧客がオプショナルで搭載しているだけだというのが主な理由だ。