西武、再上場へ 1000億投資したサーベラス、数百億の株売却益は確実か?

 西武ホールディングス(HD)は1月15日、東京証券取引所に対して再上場の申請を行った。同社は今年4月からの上場を計画しているという。西武HDの前身である西武鉄道は、有価証券報告書虚偽記載のため、2004年12月に上場廃止となっていた。その西武鉄道を救ったのが米投資会社のサーベラスだった。

【サーベラスと共に取り組んだ西武再建の道のりはどうだったか?】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)は、サーベラスの当初の出資額は1000億円で、他に日本国内の金融機関が600億円を出資、メインバンクのみずほ銀行から、現在の社長である後藤高志氏が送り込まれたと伝える。

 同紙によれば、西武は以後、広範囲にわたって資産を売却し、かつては手掛けていたゴルフ、スキー、アミューズメントといったレジャー分野からも手を引いて、鉄道とホテル業に専念してきた。それでも、事業構造改革は必ずしもサーベラスの思い通りに進んだわけではなかった。両社間の論争は日本と西洋の企業文化衝突のシンボルだったという。

 複数メディアの伝えるところでは、サーベラスは、西武が東京近郊で経営する不採算ローカル線の廃止や、西武ライオンズ球団の売却も求めたと言われる。昨年6月の株主総会でサーベラスは、元アメリカ副大統領のダン・クエール氏や元財務長官のジョン・スノー氏を役員に送り込もうとしたが否決された。ロイターによれば、これに対して西武も反撃に出て、安倍内閣の菅官房長官に対してロビイングを行ったという。

【再上場に同意したサーベラスは、全株を手放すか?】
 ところが、昨今の株式市場の好況で全般的に株価が回復している。同社の再上場計画を可能にした株式市場の回復は、安倍首相の金融・財政面からの景気刺激策によって拍車をかけられたのだとロイターは述べる。ウォール紙によれば、2020年に東京での開催が決まったオリンピック大会を控えて外国人旅行者の増加が見込まれ、国内外にプリンスホテルを展開する西武のような運輸・ホテル産業は将来が有望視されるという。

 ロイターは、西武HDの再上場時の株価は2000円を超え、時価総額は6840億円になるとの見方を伝えている。さらに、サーベラスは価格次第では、同社の持ち株比率35.5%の半分以上に当る20%を手放す意向だとも伝えられる。売却益は数百億円に及ぶ可能性が高く、サーベラスは投資の回収が可能となったといえる。

 ただ、ウォール紙は、サーベラスが持ち株のうちどれだけを手放すかはすぐには明らかにならず、新規株式公開(IPO)決定まで分からないだろうという関係者の見方を伝える。とはいえ、今年最初の大型公募になるだろうと予想している。

西武争奪―資産2兆円をめぐる攻防

Text by NewSphere 編集部