サントリー、1.7兆円の巨額買収で、世界3位の蒸留酒メーカーへ その背景とは?
サントリーホールディングスは13日、米蒸留酒大手ビーム社の全株式を1株あたり83.5ドル、総額160億ドル(約1兆6500億円)で買収することで合意したと発表した。
【蒸留酒メーカー世界3位の規模へ】
ビーム社はバーボン「ジムビーム」やスコッチ「ティーチャーズ」「ラフロイグ」などで知られており、米ウイスキー2位という強い基盤を持つ。
買収後、両社の売上高は43億ドルを超え、世界プレミアムスピリッツ市場で英ディアジオ、仏ペルノ・リカールに次ぐ3位に浮上する。
ビーム社経営陣は今後も米イリノイ州の本社で経営を続けるという。
サントリーの佐治信忠社長は「世界でも類を見ない強力なポートフォリオを持つスピリッツ事業が誕生することになり、グローバルにさらに大きく成長できることを確信している」とコメントした。
なお両社は既に事業提携しており、現在サントリーは日本国内でビーム社商品を、ビーム社はシンガポールなど東南アジアでサントリー商品を販売している。
【日本企業による海外企業買収で3番目の規模】
調査会社ディーロジックによると、今回の買収は日本企業による海外企業買収において、ソフトバンクの米携帯電話スプリント買収などに次ぐ3番目の規模だという。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、サントリーが国内での成長が見込めない中、海外買収に注目していると報じた。同社は2009年に仏飲料大手オランジーナ、2013年に英グラクソ・スミスクラインの飲料部門など、近年相次いで海外企業を買収している。
同紙はまた、米ウイスキー1位のブラウンフォーマン社と違い、ビーム社は家族経営でないと指摘。ラムメーカーのバカルディ社など、多くの米大手酒企業は家族経営で未上場のため、これまで酒類業界で大きな取引はなかったと報じた。
【ビーム社は株主の利益を強調】
ビーム社のデイビッド・マッカイ会長は、買収完了により「2011年10月ビーム社単独上場時からの株主に対するリターンは106%になる」と述べた。
ガーディアン紙は、同社の筆頭株主ビル・アックマン氏のヘッジファンド、パーシング・スクエアは棚ぼただと報じた。同氏は2ヶ月前、栄養補助食品メーカー、ハーバライフへの投資で4~5億ドルの損失を出していた。
一方フォーブス誌は、1株当たり83.5ドルの買収価格はビーム社の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の20倍以上の水準だと報じた。
ビーム社が単独上場して以来、最大ライバルの英ディアジオや仏ペルノ・リカールも買収に興味を示していた。ただ、今回の買収には4億2500万ドルの解約手数料があるため、ライバル社が対抗案を提示する可能性は低いとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。