日本企業、中国進出の足がかり? 台湾市場2つの魅力を海外紙が報道

 行政院経済建設委員会の管中閔・主任委員(政府の経済計画責任者)は8日、日本商工会議所との会合で、経済協力協定の締結や台湾・高雄の自由経済特区への誘致など、日台経済協力の一層の強化を訴えた。日本企業は昨年、台湾に619件の投資を行い、これは前年比40%増で新記録となっている。

【中国の代替としての台湾の魅力、ただし東南アジアに押され気味】
 日本企業にとって台湾の魅力とは何か。フィナンシャル・タイムズ紙は、2つの背景を報じている。

 まず、中国や韓国に比べ反日感情が薄いこと。中国では昨年、尖閣問題による対立から、日本企業への不買運動や暴動が発生した。台湾も尖閣諸島の領有を主張しているが、大がかりな不買運動などは起きていない。

 次に、台湾と中国の間には言語や文化の障壁が少ないため、不安要素の多い中国に直接乗り込むよりも台湾を橋渡しに使った方が安心なこと。台湾が中国のテスト市場として機能することも合わせて指摘されている。

 例えば、台湾のレストランで中国人向けメニューの実験を行うことも可能だ。「ニッチな」小規模店であるカフェ&ブティックが、すでに大企業の販路が飽和しており開業コストも高い日本を嫌って、台湾で出店した例も紹介されている。ECサイトの楽天も海外進出を決めたとき、最初に台湾を考えたという。

 ただし、つい最近まで低成長であった日本を脱出したからといって、台湾の成長率も高くはなく、小規模外資起業家にとっては「大成功してはおらず全く悲惨というわけではなく、そこそこ」の結果だという。最近は台湾も、急成長中かつ低コストを維持している東南アジアに押され気味であるらしい。

【台湾側も積極的に投資呼び込みへ】
 フォーカス台湾によると、台湾は7日にはシンガポールと、また今年すでにニュージーランドとも経済協定を締結している。さらに中国との物品貿易協定についても作業中であるという。管中閔氏は、アジアは経済統合のプロセスをスピードアップしており、台湾はこのトレンドに追いつくべく取り組んでいる、と述べている。

 8月に立ち上げられた高雄の特区は、インテリジェント物流、国際的医療、付加価値農業といった潜在力の高い分野を狙っており、金融サービスや税制優遇によって投資を誘致するという。

 日本商工会議所の側も、こうした動きを好意的に受け取っている。台湾チャイナポスト(「英文中国郵報」)によると、今年すでに台湾に41の提言を行っている商工会議所は魅力的な投資環境の確立、ECFA交渉の継続、他の国とのFTAやTPP締結、日本政府との対話確立など、5つの政策提言を行ったという。

Text by NewSphere 編集部