ソニーはなぜ苦境? 上方修正のパナソニックと大差の理由とは
ソニーは先月31日、2013年度第2四半期(7‐9月)の決算を発表。通年の利益予想を40%減の300億円に下方修正した。ビデオカメラ、デジタルカメラ、パソコン、テレビの年間販売計画を引き下げたことが要因となった。純損失は193億円とし、前年度同期の155億円から赤字幅が広がった。
1日の東京株式市場の同社株は、前日終値比11%安の1668円で終了。5年前のリーマンショック以降で最大の下落率を記録した。
【「映画事業の不振」以外の懸念事項とは】
ソニーは、赤字計上は主に映画事業が原因としている。今夏、映画「アフター・アース」や「ホワイトハウス・ダウン」が興行的に失敗した。
米投資会社サード・ポイントのヘッジファンド投資家ダニエル・ローブ氏は今年初め、映画と音楽事業の経営不振を指摘し、エンターテインメント事業を分離上場するよう提案した。しかしソニーはこれを拒否していた。
また一方で、ソニーは昨年社長に就任した平井氏のもと、中核エレクトロニクス事業の復活を目指した3年間のロードマップを作成していた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、このシナリオが機能していないことが最大の懸念だと指摘した。
フィナンシャル・タイムズ紙は、家電、特にテレビの不採算は深い構造的な課題だと指摘。これからのクリスマスシーズンの3ヶ月が勝負だと報じた。
【スマホ「Xperia」シリーズ、PS4事業の楽観的見通しに期待できるか】
一方、スマートフォン「Xperia」シリーズは好調だ。他の家電の販売計画は引き下げたものの、スマートフォンは従来の4200万台のまま据え置いた。今後はヨーロッパ市場以外にも、世界最大のスマホ市場である中国などの新興国でも事業を拡大していくという。ブルームバーグは、世界モバイル市場7位から、サムスンやアップルに続く3位へと上がるだろうと報じた。
また、新型の据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」を来月、北米から発売。3月末までに全世界で500万台の販売を計画している。ただ、「競争激化や消費者のし好の変化から、これらの事業の見通しは保証されない」とのアナリストの指摘をウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載した。
【ソニーとパナソニックの事業リストラ手法の違いとは】
パナソニックは今期の純利益予想を従来の500億円から1000億円に倍増。ソニーの成長重視に対し、パナソニックは合理化を推進。赤字の要因であったプラズマディスプレーの生産を12月に終了することを発表し、再生可能エネルギーの拡大にも取り組んでいる。
「消費財の需要が低迷する中、改革に焦点を当てるため、今静かにしているパナソニックは賢明だ」とのアドバンスト・リサーチ・ジャパンのアナリスト、石野雅彦氏の見解をブルームバーグは掲載した。
また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙では「ソニーは家電から撤退し、パナソニックのように法人向け製品にもっと集中することを考慮すべき」との格付け会社フィッチ・レーティングスのスティーブ・デュローズ氏の見解を掲載した。