キリン、南米進出起点のブラジルで苦戦 その理由とは?

 キリングループの「ブラジル・キリン」社は、「Devassa(デベッサ)」ビールをブラジルでの主力商品としているが、女性モデルを起用した新広告が同国内で問題視されている。

【もともと注目度高いデベッサ広告】
 現地報道によれば、「女性モデルの装いやポーズに加えその宣伝文句が挑発的で過激」という理由で、10月、女性団体などからブラジル政府に広告差止めの請願書が提出されたという。これを受けて、政府も同社への処分を検討しており、注目が集まっているようだ。

 ビールのデベッサといえば、その広告については以前から話題に事欠かない。例えば2010年にはパリス・ヒルトンをイメージモデルに起用。「映像の内容が官能的すぎる」と国内の女性団体が広告打ち切りを要求したが、このCMは世界的に広まり、現在でも賛否が分かれている。

【南米市場進出予定のキリンの足を引っ張る事にも?】
 今回の広告問題も似た展開を示しているが、デベッサを扱っていたブラジルのスキンカリオール社を2011年8月にブラジル・キリンが買収したことにより、現広告内容に対する批判の矛先はブラジル・キリンに向けられることとなった。

 ラテンアメリカヘラルド紙によれば、ブラジル・キリンの2013年度の目標は、同国内のドリンク市場で地位を固めることである。そして同社は、今年1月、デベッサ等の売り上げに基づく業績向上を受け、今後南米諸国での更なる市場シェア拡大を図ると発表。

 デベッサの更なる売れ行きへの期待も膨らむ矢先、その新イメージモデルの広告で足を取られる形となった。

【難題続き・・・苦闘するキリン】
 さらに現地のサンパウロ紙によれば、今年8月、ブラジル・キリンには、社員への嫌がらせに基づき、労働裁判所から70万レアル(約3200万円)の賠償命令が下ったという。労働検察庁の調査によれば、従業員らは、営業成績不振を理由とした配置転換など、同社上層部から圧力をかけられていたという。

 南米進出の起点として積極的に足を踏み入れたブラジル市場で、キリンにとって予想外の問題が続出している状況といえる。

Text by NewSphere 編集部