創業3年で企業価値3000億円 ソフトバンクが買収したソーシャルゲーム会社が熱いワケ

 通信大手ソフトバンクは15日、フィンランドの新興ゲーム会社スーパーセルの株式51%を15.3億ドル(約1515億円)で買収すると発表した。

 海外各紙の報道は、ソフトバンクの拡大にはあまり焦点を当てていない。むしろ、ゼロから出発した新興企業スーパーセルが、たちまちここまでの企業価値を得るに至ったことが、驚きをもって伝えられている。

【機敏な少数精鋭チーム】
 2010年創業のスーパーセルは、「Clash of Clans」(戦いを通じて自分の村を発展させるゲーム)、「Hay Day」(農業擬似体験ゲーム)の2タイトルが人気であり、ともにApple iPhoneおよびiPad用ゲームとしては世界トップランクだ。

 同社はゲーム業界史上最速と言われる急成長を遂げている。同社のゲームは、「フリーミアム」と呼ばれる、基本プレイは無料だが追加要素に課金されるタイプの携帯端末用ゲームで、収益性が高い。

 スーパーセルは当初、椅子や机すら足りない、狭い一室からスタートした。同社は少数精鋭主義で、現在でも100人足らずの従業員しかいない。10万人を数えるフィンランドの通信会社ノキアが最近マイクロソフトに主要部門を買収され、かつてノキアの入っていたオフィスフロアをスーパーセルが使用しているという現状と、対比的に報じられている。

 またソーシャルゲーム業界内においても、かつてオンラインゲームで一世を風靡したが現在苦戦している米ジンガ社は、評価額が28億ドルまで下がっており、スーパーセルに負けている。スーパーセルは、900以上のタイトルを持つ米エレクトロニック・アーツ社より稼いでいるとも報じられている。

 スーパーセルはフラットな経営思想に基づき、「セル(細胞)」と呼ばれる5、6人のチーム単位でプロジェクトを進める。暖かい国からも有望者を積極招聘するという社員らにはボードゲーム界の出身者も多いようで、原点に立ち返る意味で毎週、社内ボードゲーム大会が開かれるという。

 またプロジェクトは中止になることの方が多く、成功してもビールで祝うだけなのに対し、中止されればシャンパンでチームを労うという。実際、同社は当初、Facebook上でゲームを展開する戦略であったが、プレイヤー層の中心が携帯端末にシフトするとの予想から、開発中のプロジェクトをも果断に捨ててAppleストアに移行。その決断が的中する結果となった。

【Android優勢のアジアをめざす】
 スーパーセルは、「パズル&ドラゴンズ」で有名な日本のソフトバンク傘下メーカー、ガンホー・オンライン・エンターテイメントとも、すでに提携実績がある(実際、買収額のうち20%はガンホーが負担する)。出資はスーパーセルの増資が目的ではなく、Apple iOS系が中心のスーパーセルと、アジアで強いGoogle Android系で実績のあるガンホーが、協力を強めるというねらいのようだ。

Text by NewSphere 編集部