サントリー、2,100億円で英大手飲料ブランド買収 その裏側とは?

 清涼飲料大手のサントリー食品インターナショナルは9日、イギリス製薬大手グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)の清涼飲料事業を、約2,106億円で買収すると発表した。

 買収したブランドは、イギリスのスポーツ飲料市場で販売シェア1位の「ルコゼード」と、果汁飲料4位の「ライビーナ」。同国だけでなく、アジア、アフリカでも高い知名度を持つ。09年のフランスの飲料大手オランジーナ・シュウェップ買収に続く大型買収だ。

【GSK側の事情】
 国内ではあまり報じられていない、事業を売却したGSK側の事情について、英インデペンデント紙やロイターは下記のように報じた。

 GSKは4月、新薬開発の主力事業に注力する方針を打ち出し、飲料事業の売却を発表していた。ルコゼードとライビーナについて、トップが「GSKに多大な貢献を果たした象徴的なブランド」としながらも、同社が今後製薬分野で進出したい新興市場では、シェア獲得が難しいと判断したようだ。

 以前は、ブラックストーンやライオンキャピタルなどの大手投資ファンドが買い手として噂されていたが、7月下旬から本格的に検討を開始したサントリーが買収することになった。

 GSKのスポークスマンは、「イギリスの工場で働く約500人を含む従業員の雇用を守るためにも、サントリーのオファーは魅力的だった」と語った。従業員の大半がサントリーに移る形になるという。

【大きな目標】
 一方、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「2020年に売上高2兆円を達成する」とするサントリー社グループの目標に焦点を当てている。

 2012年の売上高は1兆円弱だった。そのため、目標達成のためには、毎年11%ずつ売上を伸ばす必要がある。同紙は、売上の3分の2を占める国内市場が、人口減少により縮小していく以上、積極的に海外に進出する動きは当然であるとの見方を示している。

 さらに、「まず初めに大きな目標を立て、それから実現方法を考える」という方法論を、アメリカの月面着陸計画にたとえ、必ずしも不可能ではないと伝えている。

【積極的な日本企業】
 また、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、このところ、飲料メーカーに限らず日本企業が積極的に海外の企業・事業を買収している点について注目。

 直近の大型買収に関する事例として、アメリカの製薬会社アステックス・ファーマシューティカルズを買収する大塚ホールディングス、香港のスーパーマーケット事業「パークンショップ」の競争入札に参加しているイオンを挙げている。

 また、サントリーのライバルであるアサヒ飲料が、2011年と2012年にオーストラリアとニュージーランドの飲料メーカーを買収していることに触れ、サントリーの今回の買収も、これら一連の流れに位置づけられると捉えている。

Text by NewSphere 編集部