NY市中心部の道路有料化なるか 全米最悪の渋滞緩和へ

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 ニューヨーク州都市交通局(Metropolitan Transportation Authority:MTA)は、アメリカでは初となる渋滞緩和策としての、一部道路有料化の計画が進められている。その詳細とは。

◆マンハッタンの60丁目以南の有料化
 今年5月、マンハッタンの中心業務地区(Central Business District:CBD)の有料化のための『CBD通行料徴収プログラム(CBD Tolling Program)』に関する958ページもの最終環境影響評価報告書が公表され、長年議論されてきたプログラムがいよいよ着工に向けて動き出しているようだ。このプログラムは、マンハッタンの60丁目以南を走行する車両に対して混雑課金(congestion pricing)を設け、地下鉄、バス、通勤列車といった公共交通機関を改善することを狙いとしている。混雑課金によって、150億ドル(約2兆円)規模の投資資金を確保する見込みだ。

 マンハッタン島の60丁目以南とは、59丁目まで続くセントラルパークの南端を含む地域から、タイムズスクエア、SOHO、ウォール街など主要な商業・観光地区をすべて含む場所だ。外縁を走るいくつかの道路を除いて、すべての道路が対象地域に含まれる。MTAの報告書に含まれている2019年時点のデータによると、マンハッタンのCBDと呼ばれるこの地域には、平日は1日に平均770万人の人が出入りするという。この数は東京都全体の人口の約半分に匹敵する。ちなみにマンハッタンの人口は約160万人である。

 日本と比較して公共交通機関の発達が遅れているアメリカのなかでもニューヨーク市の公共交通機関は進んでいる方だ。実際、770万人の流入人口の75%は公共交通機関を利用している。さらに、市はこれまでも公共交通機関の利用を促すための改善策や、自転車の利用を促すような施策も実施してきた。それにもかかわらず、CBDの交通渋滞は長年の課題である。全米の都市と比較しても、ニューヨーク市の混雑は全米最悪とのデータもある。

 交通渋滞は人々に具体的な悪影響を及ぼしている。MTAのデータによると、パンデミック前、毎日70万台の車がCBDを通過していた。これは年間にすると2.6億台という計算だ。また、渋滞の状況は悪化しており、2010年と2019年の比較ではマンハッタンCBDにおける車の走行速度が23%も下がり、時速7マイルとなった。同時に、域内を通過する公共バスの走行速度も28%低下した。渋滞によってニューヨーク市のドライバーが年間102時間、約1600ドル(約23 万円)の損失を被っている。さまざまな損失の経済的なコストは、5年間の総額で1000億ドル(約14兆円)と推計されている。

Text by MAKI NAKATA