ウィキリークス、TPP文書暴露 背景にある米国内の混乱とは
ウィキリークスが13日、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定のうち知的財産権保護に関する章の、米国が8月に提案していた時点での草稿をリークした。その内容は知的財産権保護を大幅強化するもので、ハリウッドや製薬会社などの意向を一方的に汲んでいるとの批判が挙がっている。
【危険な5つの条項】
インターナショナル・ビジネス・タイムズは、この草稿について、危険な5つの点を指摘した。草稿は95ページの、3万語から成る緻密で難解なもので、多数の権利擁護団体や独立組織による分析がなされた結果だという。
1. 基本的なインターネット利用の凍結
インターネットへのアクセスにおいて、コンピュータが一時コピーを作成するのに権利者の許可が必要になる可能性がある。通常のルーチン作業にも、動画をバッファリングしたりウェブサイトをキャッシュするにも一時コピーの作成は必要で、技術的な必要性を無視している。
2. 医薬品へのアクセス制限
医薬品の特許が延長される。ジェネリック薬など、安価な医薬品が入手しにくくなる可能性がある。
3. 外科療法への特許保護を拡張
外科治療に必要な機械、製品、薬品に適用されている特許例外が排除される可能性がある。
4. 著作権保護期間の延長
現在、作者の死後50年を上限に各国が個別に定めている著作権保護期間が、個人の場合は作者の死後70年または発表後95年に、企業所有作品の制作後は120年に、延長される可能性がある。経済学者や法律学者の研究では「著作権の最適な長さはせいぜい7年」だという。これほどの延長はむしろ公益に反する。
5. インターネットサービスプロバイダに著作権違反を監視するよう仕向ける
著作権侵害「の申し立て」が3回あったインターネットユーザーのアクセスを遮断し、その者の身元を明らかにするよう、プロバイダに要求する。これは監視業務の経済的および管理上の負担をプロバイダに押しつけることでもある。
【官民超党派の包囲網】
TPP交渉は密室で行われ、各国国民は交渉内容を知る事ができない。米国議員でさえ、部分的に開示されたものを監視付きで閲覧できるに過ぎない。ガーディアン紙は、こうした秘密主義全般に関する批判の声を伝えている。
米国の外交政策の改革に取り組むグループ「公正な外交政策」は、TPP文書をリークする条件でウィキリークスに7万ドルの寄付を申し出ていた。ただし全文のリークが条件であるため、今回の分だけでは満たないという。また活動グループ「未来への戦い」は、TPPの「極端なインターネット検閲制度」に対するオンライン請願書で、10万人分の署名を集めている。
またワシントン・ポスト紙は、米議会で超党派のTPP反対論が起こっていると報じた。与党・民主党内からも、151下院議員が、TPP交渉に議会が関与できないことを訴えるオバマ大統領への書簡に署名した。
さらに、国家による通貨操作を禁止する条項が含まれないという理由でTPPに反対する共和党のリンジー・O・グラハム議員と民主党のサンダー・M・レビン議員が、エコノミスト、製造業界関係者、労働者リーダーらを上院ビルに集めた。日本や韓国などによる通貨介入により、欧米の製造業者を犠牲にして、彼らの輸出が後押しされているのだという。