最大のヘビ「アナコンダ」の最長記録 ギネスに認定されない理由も解説
世界最大のヘビといわれる「アナコンダ」。その大きさに加え、多くの動物や人間を襲うことで怖れる人が多い。
巨大ヘビのイメージが強いアナコンダだが、なぜかギネス最長記録には認定されておらず、不思議に思う人もいるだろう。本記事ではアナコンダの特徴や生態と最長記録、ギネスに認定されない理由と意外な弱点についても解説する。
目次
最大のヘビ「アナコンダ」の特徴と生態
世界にはさまざまなヘビがいるが、その中でもアナコンダは最大といわれる。ここではそんなアナコンダの特徴と生態を紹介する。
アナコンダの特徴
アナコンダは、ボア科アナコンダ属のヘビである。アナコンダはオオアナコンダとキイロアナコンダとに分類されるが、一般にアナコンダというとオオアナコンダを指す場合が多い。
オオアナコンダの中には、体長が9m近く、体重は230㎏、胴回りは約30cmほどにもなる個体もある。体重は同じく巨大ヘビとして知られる「アミメニシキヘビ」の約2倍あり、それが世界最大といわれる所以だ。
オオアナコンダの食性は肉食である。頭の頂上部に眼と鼻腔を持つため、水面から頭を出し、水中に身体を沈めた状態で獲物を待ち伏せできることが特徴だ。
アナコンダの生態
アナコンダの生息地は南米の熱帯雨林で、主にアマゾン川やオリノコ川流域の湿地帯で多く見られる。
アナコンダは陸上では動きが鈍いものの泳ぎは得意で、水中で獲物を捕獲することが多い。獲物を捕らえたあとは、長く太い体で巻き付いて締め上げ窒息させる。そして伸縮性のある大きなアゴで、ブタやシカ、カイマン、ジャガーなども丸呑みしてしまう。大物を捕食したアナコンダは、そのあと数カ月間、何も食べずにいられるという。
アナコンダのメスは体内で卵を孵化させるため、生まれた子どもはすぐに泳ぎと狩りができることも特徴的だ。生まれた時から逞しいアナコンダの寿命は、約10年といわれている。
「アナコンダ」の最大記録
世界最大のヘビとされるアナコンダだが、意外にもギネス最大記録に認定されていない。ここではその理由とともに、認定外記録も併せて紹介する。
アナコンダはギネス最大に認定されていない
最大のヘビとのイメージが強いにもかかわらず、アナコンダがギネスの最大記録に認定されていないことは意外だろう。
ギネス記録で最大のヘビとされているのはアメリカのアミメニシキヘビ「メデューサ」で、体長は7.67mである。
実は近年、それより長く大きなオオアナコンダの個体が発見された。2016年にブラジル山中の建設現場で、体長10mのオオアナコンダが見つかっている。このときは個体の計測が行われ、写真と動画にも納められた。
しかし、クレーンに吊るされた個体は残念ながら頭部が潰れ、すでに息絶えていたためギネス記録に認定されなかったのだ。死因はダム工事による爆死とも、捕獲後の作業員による虐待ともいわれるが、真相は不明である。
未確認の最大記録は40m以上
未確認の目撃情報の中には、過去に40m以上のアナコンダがいたとの噂もある。
1997年のペルーで、体長40m以上のアナコンダと思われるヘビの目撃情報が上がった。複数人の現地住人たちが姿を目撃したというものの、写真などの証拠がないため信憑性に欠ける。
さらに時代を遡ると1950年代のブラジルでも、体長40m以上・体重400㎏以上のアナコンダが発見され、兵士たちにより500発の銃弾で仕留められたという。これに関しては当時の新聞とモノクロの不鮮明な写真もあるものの、記録に不可解な点が多くヘビの計測方法も不明なため、当局の誇大広報であったとの見方が強い。
参考:ヘビの史上最大記録はティタノボア
史上最大のヘビは、今から約6,000万年前に生息していた「ティタノボア」である。
南米コロンビアの熱帯雨林で発見された化石からは、体長が13m、体重1,135㎏あったと推定される。現存種のオオアナコンダやアミメニシキヘビよりも、一段と大きく太い。
ティタノボアがこれほど大きくなった理由は、当時の気温が高かったことにある。この時代の平均気温は年間を通して32度前後と考えられ、爬虫類はみな現存種より大きかったことがわかっている。
現在は地球温暖化が問題になっているが、このまま気温が上昇を続けると、近い将来ふたたび地球上にティタノボア級の巨大生物が出現するかもしれないと、一部の専門家は警鐘を鳴らしている。
アナコンダが最大といわれる理由
アナコンダ以外にも巨大ヘビがいるにもかかわらず、なぜアナコンダが最大というイメージが強いのだろうか。ここでは、その理由を3つの角度から探っていく。
アナコンダが「神」とされている影響
巨大ヘビの目撃情報の一部は、神格化されたアナコンダに対する畏敬の念のために誇張された可能性がある。
南米の原住民は、もともとアナコンダを「神」と崇め畏れていた。そのことで、アナコンダの目撃情報が口から口へ伝わるうちに、話が大きくなっていったことは考えられる。
1900年代までのアマゾン川流域には未開の地も多かった。そのため渡来した白人や日系移民にとって、その奥に住むアナコンダは神秘と恐れの対象だったことは想像に難くない。
現地で神と畏れられたアナコンダを、渡来者たちが実際より大きくイメージした可能性はありそうだ。
パニック映画の影響
アナコンダが最大のヘビとして恐れられる理由のひとつに、1997年公開のパニック映画「アナコンダ」の影響も考えられる。
映画のヒロイン一行は、アマゾンを探索中に巨大なオオアナコンダと遭遇。仲間が次々と餌食にされるシーンは、世界中の観客を恐怖に陥れた。当時は映画本編だけでなく、予告で怯える視聴者も多かったという。
人間とアナコンダの死闘を描くシリーズは4作目まで制作されている。しかし映画評論サイトや一般観客からの総合的な評価は高くなかったようだ。
画像や動画の影響
アナコンダは閲覧できる画像や動画が多数あるために、ほかの種のヘビと比べ大きい印象を植え付けられているとも考えられる。
写真に関しては合成の疑いがあるなど信憑性に欠けるものも多いものの、対象物との比較から一見したときのインパクトは相当だ。テレビなどのメディアで紹介される回数が多く、複数のYouTube動画でも紹介されているなど、動いている姿での露出が多いこともアナコンダの特徴である。
日常で目にする機会が多いために、アナコンダが最大というイメージが出来上がった可能性もありそうだ。
アナコンダは最大の脅威か?
最大のヘビ・アナコンダは最大の脅威といえるのか。ここでは天敵や人間との関係、弱点からアナコンダが再強かどうかを探っていく。
アナコンダにも天敵はいる
大きな個体のアナコンダにはほとんど天敵がいないものの、他の大型動物に捕食されないとも言い切れない。
水中では泳ぎに長けているアナコンダだが、陸の上では動きが鈍いため、大型のワニなどに襲われることがある。さらにオスに限っていえば、体内で卵を孵化させるメスに食べられてしまうことも。オスよりも体の大きいアナコンダのメスは、卵を半年抱えるためにオスを栄養源にするらしい。
こうしてみると、アナコンダも無敵の存在とはいえないようだ。
アナコンダは進んで人を襲わない
稀に人間がアナコンダに襲われる事件が起こる。しかしアナコンダから進んで人間を襲うわけではないらしいことが、いくつかの動画から伺える。
実は無謀にもアナコンダに「食べられる」動画の撮影を試みた者がいる。その際に撮影者が自分を食べるようたびたび挑発しても、アナコンダは逃げるそぶりを見せていた。あまりにしつこく挑発されたためか、ついにアナコンダが男性を締め上げたところで、スタッフにより引き離され、撮影は終了。
アナコンダが人間から逃げようとする動画は他にもある。ボート乗船中にアナコンダと遭遇した男性が、アナコンダの尾を掴んで何度も引き寄せようとする動画では、そのたびにアナコンダが振り払おうとする様子が伺える。
基本的にアナコンダは人間を捕食することに興味はなく、むしろ人間を恐怖や迷惑と感じているかのようだ。
アナコンダにも弱点はある
結論からいうと、最大のヘビ・アナコンダにも弱点はある。
少なくとも、アナコンダが食物を飲み込み消化するまでの間は無防備で、そのタイミングで天敵に襲われる可能性が高い。アナコンダの食物摂取と消化には5時間を要するといわれ、その間は身体が動かず逃げられない。事実、アナコンダは食物摂取中にジャガーやカイマン、ピラニアの群れに襲われ犠牲になることも多い。
最大のヘビ・アナコンダでさえ、天敵から逃げられない無防備さを垣間見せることはあるのだ。
アナコンダは最大級の存在感
アナコンダの大きな個体は体格も最大級だが、存在感はほかのどの種のヘビにも勝る。
人喰いのイメージもあるアナコンダではあるが、大自然の中では必ずしも最強ではなく、人間側の勝手な思い込みのようだ。
アナコンダに対し、映画のように無為な接触はせず、そっと生態を見守ることが最善の共存策ではなかろうか。