「第8波」を起こすか? 世界で注視されるオミクロン株の派生型

ドイツのミュンヘンにある予防接種センター(10月14日)|Matthias Schrader / AP Photo

 オミクロン株の「BA.5」が引き起こした第7波が落ち着いた日本。では世界では現在、どんな変異ウイルスが注目されているのだろうか?

◆流行株は相変わらずオミクロン株
 まず、現在世界的に広まっている変異株は、相変わらずオミクロン株だ。その亜系統のうち最も広範囲で流行しているのはBA.5である。感染者の増加率がとくに高い国はドイツとシンガポールで、両国とも優勢を占めるのはBA.5系統の「BA.5.2」だが、シンガポールでは「XBB」が急激に増加している。

◆シンガポールで急激に増加するXBB
 XBBは「BA.2.75」と「BJ.1」(BA.2亜系統)の組み合わさったもので、9月12日に最初にシンガポールで確認された(フュチューラ・サンテ誌、10/14)。同国の1日平均の新規感染者数は9月には3000人だったのが、10月12日には6800人にまで増加しており、その感染力の強さがうかがえる(シュッド・ウェスト紙、10/13)。

 プレプリント(査読前の論文)の発表媒体「BioRxiv」に4日に発表された中国の論文によれば、XBBはとくに免疫回避能力に優れており、既存の治療薬への耐性がある。中国で用いられている「コロナバック」ワクチン接種で得られる抗体もあまり効果がない。ただし、同研究は、中国以外の国で広く用いられているファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンで得られる抗体については扱っていない。(フュチューラ・サンテ誌)

 XBBは、シンガポールのほか、バングラデシュやアメリカのニューヨーク州、デンマーク、ベルギー、オーストリア、イギリスでも確認されている。オーストラリアでは新規感染者の5%を占めているが、なお少数と言える(ミディ・リーブル紙、10/14)。XBB感染による症状や重症度についてはいまだデータが不十分だが、シンガポールの健康当局は、「重症者は比較的少なく、XBBがより重度の疾患を引き起こすという証拠はない」と見ている(シュッド・ウェスト紙)。

Text by 冠ゆき