新たな役割を負う英王室の次世代 期待される兄弟の雪解け

Kirsty O'Connor / Pool Photo via AP

 ウィリアム皇太子夫妻とヘンリー王子夫妻が揃って登場し、世間を驚かせた。長きにわたり女王の座に君臨してきたエリザベス2世を偲ぶためウィンザー城の周りには大勢の人々が集まり、4人は彼らに温かい挨拶を送った。

 2020年3月以来、兄弟が友好的に公の場に姿を現すのは初めてのこと。並んで歩く「英国王室の若い世代」は、新たな責任を負う立場へとステップアップする時期を迎えている。

 女王の死後、父親のチャールズ3世が国王になり、長らく王位継承権第2位だったウィリアム王子は皇太子となった。皇太子夫妻はともに40歳で、3人の幼い子供の親であり、これからは王政の新しい顔としてさらに中心的な役割を担うことになる。

 2年前ヘンリー王子が王室離脱してアメリカに移住して以来、ウィリアム皇太子とヘンリー王子の仲は冷え切っていた。兄弟が11日に見せた姿は、ウィリアム皇太子の声がけによるものだと言われている。37歳になったヘンリー王子が、これから兄の肩にのしかかる職務を共有し、皇太子を支えていくのではないか、と期待する声も聞かれる。

 マジェスティ誌のジョー・リトル編集長は「確かに、ウィリアム王子とキャサリン妃はあらたな皇太子および皇太子妃として、さらにメディアのスポットライトを浴びることになるでしょう。9月8日までは、ウィリアム王子と王位の間に緩衝材がありましたが、それはいま取り払われたのです」と話す。

 ウィリアム皇太子夫妻は8月下旬に、家族の拠点をロンドン中心部から郊外のウィンザーに移すと発表したばかりだ。その時といまとでは状況は180度変わっている。彼らはよりプライバシーが守られる環境、そして私立学校でともに新年度を迎えたばかりの子供たちのために、より「普通」の教育を求めているとみられていた。

 チャールズ新国王は即位するずっと前から、フルタイムで活動する王族を中心とした「スリム化」された王政、そして経費削減を望んでいた。

 それはヘンリー王子が渡米する以前のことで、王子たちの叔父であるアンドリュー王子が性的虐待のスキャンダルで公の場から事実上追放される前のことでもある。

 数百にのぼる年間行事や、数多くの海外訪問を分担できる「ワーキングロイヤル(君主を公式に代行できる王室メンバー)」の数は多くない。具体的にはチャールズ国王夫妻(妻はカミラ新女王陛下)、ウィリアム皇太子夫妻、エリザベス女王の一人娘であるアン王女、末のエドワード王子と妻のソフィー妃である。また、王族として活動しているが、あまり知られていないのが、エリザベス女王のいとこであるリチャード王子とその妻バージット妃だ。

 10日に放送された国民への最初のスピーチで、チャールズ国王は自身の称号である「プリンス・オブ・ウェールズ」をウィリアム皇太子に正式に授与した。ケイト妃もまたウェールズ王女となり、ウィリアム皇太子の亡き母ダイアナ妃以来、はじめてその称号を持つ人物となった。

 ウィリアム皇太子夫妻はほかにも、チャールズ国王夫妻から名誉ある称号、コーンウォール公爵と公爵夫人も受け継いでいる。これはつまり、英国全土におよぶ、10億ポンドの価値があると言われるコーンウォール公爵領の管理と収入を受け継いだということでもある。

 チャールズ国王は「我々の新たなウェールズ公と公妃は、これからも我が国の会話を刺激し、リードし、限界にあるものを、重要な援助ができる中心地に持ってくる手助けをしてくれることでしょう」と述べている。

 新国王はさらに、環境や気候変動など、自らが最も関心を寄せる問題にこれまでほど多くの時間とエネルギーを割くことができなくなるだろう、とスピーチで明らかにした。

 今後は、ウィリアム皇太子がこうしたテーマについてより多くの時間を費やすことになる。すでに地球環境保護問題に対する取り組みを表彰する「アースショット賞」を創設しており、今後10年で数百万ポンドも提供する野心的な「レガシー・プロジェクト」となっている。

 ウィリアム皇太子は「グラニー(エリザベス女王の愛称)のいない生活が本当にリアルに感じられるようになるには、まだ時間がかかるでしょう。私は父である国王をできる限りサポートすることで、彼女の思い出を称えようと思います」と声明で語っている。

 チャールズ国王は国民への演説のなかでヘンリー王子についても短くコメントし、「海外で生活を築き続けるヘンリーとメーガンへの愛」を表現した。

 ヘンリー王子とメーガン妃(サセックス公爵夫人)は、経済的自立と英国メディアの厳しい監視からの解放を求め、イギリスを離れた。

 夫妻は現在、2人の幼い子供とともにカリフォルニアで暮らしている。ヘンリー王子もメーガン妃も渡米以降、王室に対する不満を何度も口にしてきた。

 10日、こうした緊張は一掃された。2人の王子とその妻は同じ車に乗り、ウィンザー城の門の外で、道路に設置された柵の向こうに押し寄せた人々を出迎えたのである。それぞれが立ち止まって子供や大人に話しかけ、興奮した群衆から花やお悔やみを受け取った。

 バニタ・ラナウさん(28)は「とても美しい光景でした。感動しましたし、女王もきっとお喜びでしょう」と話している。また、その母親のバルジンダーさんも「素晴らしかったです。将来もこのままで、兄弟が力を合わせてくれることを願うばかりです」と語っている。

By SYLVIA HUI Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP