東京五輪、3つの勝因とは 海外メディアが分析
8日、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年夏季五輪・パラリンピックの開催都市が東京に決まった。1回目の投票でマドリード(スペイン)が脱落。決選投票でイスタンブール(トルコ)が脱落し、東京が過半数を獲得した。
東京での五輪は1964年以来2回目となる。過去に大会が複数回あったのはアテネ、パリ、ロサンゼルス、ロンドンだ。
海外メディアは東京五輪決定の背景と今後の課題について報じている。
【安倍首相のプレゼン】
最終候補の3都市は、それぞれ大きな懸念材料を抱えていた。東京は、福島第一原子力発電所での汚染水問題。イスタンブールは、デモなど政情不安と、隣国シリアの内戦。マドリードは、高い失業率など経済不安。さらにイスタンブールとマドリードは、自国選手のドーピング問題でも厳しい立場に立たされていた。
こうした状況下で、「汚染水問題に政府が対処できるのか?」という懸念をやわらげられたことが、勝因の一つだとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。安倍首相自ら最終プレゼンテーションに臨み、「状況は制御されています」と東京の安全を訴え、抜本的解決に向けた「個人的責任」を強調したことが功を奏したといえる。
【安全、安心、確実】
一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、不確実な時代において、IOCは「安全・安心」を選んだと指摘した。
ニューヨーク・タイムズ紙も同様に、日本の大規模国際イベント運営経験が評価されたとみている(1964年の東京五輪、1998年の冬季長野五輪、2002年のサッカー日韓W杯)。
さらに同紙は、経済的な不安も小さいことを挙げた。実際、東京は45億ドル(約4500億円)の開催準備金を用意しており、来訪者向けのホテルや交通網なども整備されている。
【復興支援というメッセージ】
イスラム圏初の開催を訴えたイスタンブールは、「スポーツを通して人々を繋ぐ」というオリンピックのメッセージを具体化できる唯一の候補地として、有利とされてきた。
一方東京は、2008年夏に北京五輪が行われ、2018年冬には平昌(韓国)五輪が予定されているなど、アジア圏への集中という観点から不利という見方も強かった。
メッセージという意味では、2011年の東日本大震災・津波からの復興支援への意志を示すチャンスともなった、とニューヨーク・タイムズ紙は論じている。