薬が効かないスーパーバクテリアの感染症、年120万人超が死亡

抗菌薬に耐性を示す傾向の強い緑膿菌|Janice Haney Carr/CDC via AP

 今年1月、ワシントン大学とオックスフォード大学がランセットに発表した共同研究によれば、新型コロナの陰で「スーパーバクテリア」が広がりを見せ、その犠牲者も増えている。これは次のパンデミックの起因になり得る大きな問題だ。

◆抗生物質の効かないバクテリア
 スーパーバクテリアとは、抗菌薬(抗生物質)への耐性を獲得したバクテリアのことで、薬剤耐性(AMR)菌とも呼ばれる。言い換えれば、ごく少数の抗菌薬しかスーパーバクテリアには効かないのだ。

 薬剤耐性菌が増加している大きな原因は、抗菌薬の濫用が挙げられる。つまり、ヒトや家畜を対象に、必要以上に抗菌薬を投与したせいで、耐性をもつバクテリアが台頭したというわけだ。

◆国際的な課題
 薬剤耐性菌の問題は、以前から国際的な課題となっており、2015年5月の世界保健総会では、薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択された。新たな抗菌薬の開発は減少しているのに対し、薬剤耐性菌は世界的に増加する傾向が続いており、2019年10月には「複数の抗生剤に耐性を持つバクテリアは、年々指数関数的に増加しており、毎年70万人の死亡原因となっている」(ブラジル・パラ・トドス)とするエクアドルの大学の研究も発表された。

Text by 冠ゆき