アフガニスタンに飢餓の波、WFP現地代表が警告
1月13日に国連世界食糧計画(WFP)の高官が語ったところによれば、食料供給を維持する資金が不足し、アフガニスタンが「飢餓の津波」に直面している。経済危機に瀕するアフガニスタンでは、人口の半数以上がこの冬を乗り切るための食糧確保にも困難をきたす状況だ。
WFPアフガニスタン代表のメアリーエレン・マクグローティー氏は、AP通信とのインタビューのなかで「政治的議論よりも人道上の必要を優先し、タリバン政権下のアフガニスタンに対して数十億ドル規模の援助を継続実施して破局的事態を回避する」よう、国際社会に対して求めた。
人道援助を担う国連機関であるWFPによると、現地では2280万人が深刻な食糧不足に直面しており、そのうち870万人は飢餓状態に近いという。
ブリュッセルにてインタビューに応じたマクグローティー代表は「2022年に入って資金が不足しています。アフガニスタン国内のいわゆる人道セクター全体として、包括的な支援策を展開するためには今後一年間に44億ドルが必要です。またWFPに限っていえば、2022年中に必要な最低限の支援活動を行うのに26億ドルを必要としています」と述べている。
従来から国際援助に依存してきたアフガニスタン経済は、昨年8月中旬のアメリカ軍とNATO軍の撤退によってタリバンが政権掌握を果たした時点で混乱を極め、すでに厳しい状況に直面していた。国際社会は、2001年以前に政権の座にあったタリバンが過去に行った悪名高い数々の蛮行を考慮し、タリバン政権への協力を拒否。アフガニスタンの海外資産は凍結され、同国への資金提供も停止された。
新型コロナウイルスの危機に干ばつが重なったことに加え、資金不足によってアフガニスタン経済は壊滅的な打撃を受け、インフレが劇的に加速。食料価格は過去2ヶ月で50%以上も上昇した。
マクグローティー代表は最近、アフガニスタン北東部バダフシャーン州を訪問し、そこで年老いた農民たちに出会った。農民らは、自分たちはこれまで19もの異なる政権下で生活を送ってきたが、現在の苦境はそのなかでも最悪だと話したという。
マクグローティー氏は「彼らは何十年にもわたる紛争のなかでも、今回のように人道支援に頼らざるを得ない状況に陥ったことは過去に一度もありませんでした。彼らにとってもこれまでに例を見ない状況です。過去50年以上も続いてきた紛争下の生活よりも、今回の飢饉の方が厳しいと語りました」と話す。
同氏は国際社会に対しアフガニスタンへの資金提供を続けるよう促し、その資金はタリバン自体とは関わりなくアフガニスタンに還元されると訴えている。
首都カブールの新たな統治者となったタリバンは当初、女性や少数部族に寛容な姿勢をアピールし、彼らを尊重することを約束した。しかし、ここまで実際に新タリバン政権が実施してきた女性に対する新たな制限措置や、すべての政府ポストを男性のみで独占した彼らの実際の行動は、国際社会にとっても海外の資金提供者の目から見ても、決して好ましいものには映らなかった。
マクグローティー氏は「私たちはアフガニスタン国内の紛争地域で長年活動してきました。皆様からお送りいただいた資金は、現地の支援団体のもとに直接届きます。私たちは提携団体との協力のもとで、現地のコミュニティに直接的な支援を実施します」と述べている。
同氏によれば、WFPは冬期の数ヶ月間の厳しい情勢を見越して、同国北東部と中央高地エリアの主要地点にて食糧配給を実施することはできたという。しかしここまですでに国内主要道路の一部が雪で塞がり始めており、支援の必要性はさらに切迫している。
マクグローティー氏は「皆さんは、幼い子たちに食べさせる物が何もない状況を想像できますか? また、その子たちを寒さから守ることもできない状況を想像できるでしょうか? それは想像を絶する苦境です。その苦境の一部を何とか回避するために、いまこそ、皆さんからの支援が必要です。破局的な事態は、もうすぐそこまで来ています」と語る。
アフガニスタンの人々は現在、飢餓のなかで生きるか、国外に脱出するかの選択を迫られている。
By SAMUEL PETREQUIN
Translated by Conyac