「自由世界のリーダー」引退 メルケル後の世界、16年のレガシーとは

Michael Sohn / AP Photo

 9月26日、ドイツの総選挙(ドイツ連邦議会選挙)が行われた。アンゲラ・メルケル首相は2018年に引退を表明。今回の選挙は、16年間首相の座についていたメルケルに変わって政権を主導する新しいリーダーを決める選挙として注目された。選挙結果は票が割れ、連立政権の発足まではメルケルがその座に留まる。メルケル後の世界と彼女のレガシーとは。

◆ドイツ「安定」の終焉
 26日の選挙結果は、接戦の末、中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が25.7%の得票率で第1党となった。第2党は、メルケル首相の後継であるアルミン・ラシェット(Armin Laschet)が率いる中道右派、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)。その得票率は24.1%で、過去最低の数字となった。CDU・SCUは50議席を失った一方、SPDは今回の選挙で53議席を追加した。続く第3党は、アンナレーナ・ベアボック(Annalena Baerbock)が率いる同盟90/緑の党で、5.8ポイント増加の14.8%の得票率。そして、自由民主党(FDP)が11.5%、ドイツのための選択肢(AfD)が10.3%と続いた。どの政党も単独政党としては過半数の368議席を獲得しなかったため、各政党が連立交渉に入った。連立政権が発足するまでは、メルケルが首相の座に留まる。交渉は年末まで長引く可能性がある。

 連立政権のパターンはいくつか可能性があるが、FDPおよび緑の党が2大政党のどちらかと連立政権を組む可能性が考えられる。つまり、SPD(政党色は赤)、FDP(政党色は黄色)、緑の党(政党色は緑)で構成された「信号」のパターン、もしくはCDU・CSUの黒および、FDP、緑の党で構成された「ジャマイカ(国旗)」のパターンだ。第1党であるSPDの首相候補、オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)は、現在の第4次メルケル内閣の副首相と財務大臣を兼任する。過去、第1次メルケル内閣でも労働・社会大臣を務めた。シュルツは、対立政党SPDに所属しているが、手を菱形に組んだメルケルの定番のハンドジェスチャーを真似したり、女性の首相に対して使われる単語「Kanzlerin(男性はKanzler)」を使ったりし、自分がメルケルの後釜であるというアピールをしてきた。SPDの得票率を見る限り、「メルケルのようなリーダーだ」というアピールは、ある程度功を奏したようだ。新政権発足は、4期16年間続いたメルケル政権による安定のドイツの終焉を意味するが、必ずしもメルケルに変わる新しいリーダーの誕生というわけではなさそうだ。

Text by MAKI NAKATA