隔離ホテルでのトレーニング動画が人気に 中国帰国の五輪選手たち

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 コロナ禍での東京五輪が8月8日閉会し、世界各国の選手が帰路についた。金38個、銀32個と銅18個の計88個のメダルを獲得した中国のオリンピック選手たちも、最後のグループ213人が8月9日夜、北京空港に到着し正式に幕を閉じた。世界第2位の金メダル数に加え、会期中の中国選手は感染者ゼロ、226回のドーピングテストもすべて陰性という栄誉を携えての凱旋帰国であった。

◆1年以上も鎖国状態の中国
 中国の国民的英雄たちの帰国を待っていたのは、華々しいパレードや歓迎式典ではなく、21日間の隔離生活だった。というのも、現在中国では海外からの帰国者全員に「14日以上」の隔離生活を課しているからだ。五輪代表団も例外なく、空港から直ちに隔離施設となるホテルへと送り届けられた。彼らの隔離生活は21日間と報じられている(テンセントニュース)。

 中国は、国内で収束していた新型コロナウイルスの感染対策として、昨年3月28日に外国人の入国を原則禁止し、居留許可証を所持する外国人たちも入国できなくなった(中国外交部)。感染拡大が始まった海外からの人流を完全に止めるための一時的措置であったが、事実上の鎖国は現在もまだ継続中だ。
 
 同年9月に航空便が再開すると、ごく一部の外国人や帰国する中国人が入国できるようになり、出国も可能になった。しかしながら、中国からの一時出国をためらう人は多い。それは中国に戻る際に、厳格な隔離措置が待ち受けているからだ。隔離期間は情勢によって変動し、8月現在北京では21日間、割り当てられる指定ホテルの1室に1人ずつ、自己負担(1泊400元(約6800円)~)で滞在することが義務付けられている(チャイナ・ハイライト)。
 
 中国の隔離は、自主隔離などと言う生易しいものではない。隔離ホテルにチェックインした後は、部屋から出ることは許可されず、保健所の職員による毎日の検査と定期的なPCR検査、1日に3度届けられる弁当の受け取り以外は、ドアを開けることも許されない。ただし部屋には十分なペットボトル入りの飲料水や、洗面用具、テレビ、無料インターネットが完備されるほか、どうしても必要な物資などはスマホのチャットで、担当者と相談が可能だ。自宅でないことを除けば、ロックダウンと同じ状態で、耐え難い苦痛ではないが、できることなら避けたい行程だろう。

Text by 伊勢本ゆかり