テロ、ヘイトクライム増加の恐れも ロックダウン解除で懸念される治安情勢

Marcio Jose Sanchez / AP Photo

 現在、第4波といわれる新型コロナウイルスの猛威が日本中を襲っており、東京五輪の中止や延期を求める声も日に日に高まっている。一方、米国や欧州ではワクチン接種の効果も出てか、感染が落ち着く方向に傾き、ポストコロナの時代を漂わせている。それに伴いロックダウンも徐々に解除され、最近ではマスクをしない人や旅行を計画する人が見られるようになった。

 一方、筆者の専門分野であるテロ研究では、ロックダウンの解除に伴う治安情勢の悪化を懸念する声が少なくない。市民が日常の生活を取り戻すことは、決して明るい材料だけではない。

 米国では昨年以降、アジア系を狙った暴力や嫌がらせなどのヘイトクライムが大幅な増加傾向にあり、規制が緩和されることでアジア系を狙ったヘイトクライムだけでなく、一般犯罪やテロなども再び増加する恐れもある。また、英国警察は最近、ロックダウンが徐々に解除されることで繁華街などが人々でごった返し、それがテロの標的になる恐れがあると注意喚起している。

◆コロナ禍でもヘイトクライム関連の事件が発生
 コロナ禍でもアジア系を狙ったヘイトクライム関連の事件が各国で発生している。昨年、パリ郊外の日本食レストランでは、「コロナウイルス出ていけ」と書かれた落書きが発見され、ロサンゼルス近郊のトーランスでは、「日本に帰れ、猿、店を破壊するぞ」などと書かれた紙が日本人の経営する店に貼られる事件もあった。こういった事件が相まって、ロサンゼルス近郊のサンガブリエル・バレーでは昨年、標的となることを恐れたアジア系市民による銃器の購入件数が急増し、一部の銃器販売店では売上がほぼ倍増したともいわれる。

Text by 和田大樹