自動サイズ調整、体調モニタリング……AI衣料を英スタートアップが開発中

長袖のモデル「Exoshirt」。色や柄は変更可|Decorte Future Industries Ltd

 スマートウォッチの洋服版「スマートウェア」の開発が世界で進んでいる。世界のスマートウェア市場は、2019年は約16億ドル(約2070億円)だったといわれ、今後も成長が予想されている。

 日本では昨夏、NTTテクノクロス、東レ、ゴールドウインの3社が、特別なセンサーを装着したTシャツやタンクトップで暑いなかでの体調を検知する「暑さ対策用サービス」を開始した。東洋紡はスマートウェアの女性用肌着も製品化するなど、すでに日常で着られる機会が出てきた。

 イギリスでは、デコート・フューチャー・インダストリーズ(Decorte Future Industries、以下DFI。2019年設立)が一工夫加えたスマートウェアを開発しようとしており、注目を集めている。フリーサイズで、大柄でも小柄でも着る人の体型に合わせて自動的にフィットするというSF映画に出てくるような洋服だ。

◆袖に触れて、遠くにある機器を操作
 DFIの洋服はシンプルなデザインで、袖や後ろ身頃のラインがポイントだ。この服の加速度センサーにより心拍数や歩数をカウントしたり、体温センサーで体温を測る。従来のスマートウェア同様、着用している限り計測可能で1日24時間、何日分でもデータを集め管理できる。センサーは、日本のスマートウェアのように装着して取り外すタイプではなく布地と一体になっている。

 DIFの服には、ほかにも特徴がある。一つは、どんなサイズの人でも服が体型を認識して伸び縮みし、その人にフィットするようにしてある点だ(特許出願中)。この服なら、着られないサイズが余って無駄になることが減り、世界で毎年廃棄されている何千万トンもの衣類の減少に貢献できる。アパレル業界では大量生産、大量廃棄のモデルが定着し、数年前、イギリスの高級ブランド、バーバリーが1年間に数十億円相当の在庫を焼却していたことも記憶に新しい。2030年には、廃棄衣類はさらに5700万トン増えると予測されている(Global Fashion Agenda 2017)。

Text by 岩澤 里美