中国の大気汚染、「25億年分」の寿命を奪う
中国北部では、石炭燃焼による大気汚染で、5億人の平均寿命が約5年短くなった可能性があると発表された。米マサチューセッツ工科大学(MIT)などが、8日に研究報告を公表した。
報告によると、中国中部に流れる淮河を境とし、北部の住民は南部の住民より平均寿命が約5年短くなったという。合計25億年分の寿命が失われた計算になる。
背景として、冬が厳しい淮河以北では、1950年代から1980年代にかけて石炭が無料支給されていた。しかしその結果、北部は南部より大気汚染濃度が最大55%も高かったという。
海外各紙は、今回の報告の意義と影響について報じている。
【労働力は8分の1減少か?】
今回の研究結果は、2点においてとても意味のあるデータだとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
第一に、長期の公害が平均寿命や各種疾病にどのような影響を与えるか、歴史上初めてデータで明らかにしたからだ。
第二に、中国で実測公害データや国民の健康状態から導き出された結果だからである。従来、同国の公害測定方法の多くは、公害レベルがずっと低い米国で行われた調査から推定するものであったようだ。
件の研究に携わった清華大学の教授は、中国北部の平均寿命の低下は、同地域の労働力を8分の1減少させることと同等であると語った。今回の研究で、公害と平均寿命に関連があることがわかり、経済成長を犠牲にしてでも「公害問題の解決」をするため、より多くの資金を投資する価値があると見解を示している。
他方、多くの科学調査では、健康への影響はほとんどないと考えられている。これまで長期にわたりハイレベルの大気汚染にさらされた前例がないためだ。
【中国政府の公害対策、効果なし】
中国政府は、経済成長とともに公害対策にも取り組んできた。例えば近年、亜硫酸ガスなどの公害などに対処し、進歩を遂げていたと報じられている。
6月には、2017年度末までに公害物質排出量30%減の目標を設定し、また、悪質な公害の責任者に死刑を求刑できるようにしたようだ。
習主席は地方当局者に対し、「公害対策のためより奮闘する必要がある」と示し、横行する賄賂などに釘をさしたと報じられている。
なお首都北京などでも大気汚染は1月から問題になっている。北京の空気品質指数(AQI)は500を超えることが多々あるようだ。500とは緊急事態の警告レベル(6段階中最悪)である。
大気汚染に懸念を示している国民は、空気清浄器やマスクなど買い込みに走っているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じており、室内型競技場にも「濾過された空気」を提供している場所も珍しくなくなってきたと現状を伝えている。
これまで経済成長を最優先してきた中国政府が、公害対策に尽力できるのか、注目される。
※当初の小見出し【労働力は8分の1に減少か?】は、【労働力は8分の1減少か?】の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(2013/7/9 21:37)