英国、南ア、ブラジルの変異株 感染力、ワクチン効果など
新型コロナの変異株のうち、イギリス、南アフリカ、ブラジルで確認されたものがとくに世界の目を集めている。これらはいずれも従来のものよりも感染力が高いと見られており、すでに日本を含む多くの国が、変異株の確認された国・地域からの入国規制を始めた。ヨーロッパの疾病予防管理センター(ECDC)も1月21日、変異株と関連した衛生リスクを「非常に高い」レベルに引き上げた。まだ不明な点も多いこれらの亜種が呼び起こす懸念は何か?
◆イギリス変異株
2020年12月半ば、イギリスで命名された変異株VOC-202012/01は、従来の新型コロナより50~70%感染力が高いと見られており、12月末からイギリスを襲っている感染拡大の原因のひとつと考えられている。実際、「1月頭には国内の陽性結果の90%で特定」されるほど広がりを見せている。(フランス・アンフォ、1/20)また、イギリスの外へも急速に広がっており、1月20日のWHO発表によれば、すでに60の国と地域で確認された。感染力の高さは早くから指摘されたものの、「重症化を示唆するデータは認めない」(NIID国立感染症研究所、1/2)とされてきた。しかし、1月22日になってジョンソン英首相は「死亡率が高い可能性がある」と発表。英国政府最高科学顧問パトリック・ヴァランス教授によれば、これは「60代の男性の死亡リスクが、従来種が1000人に10人だったのに対し、新変異株だと1000人につき13~14人」という事実を根拠としている(20 minutes紙、1/22)。ただし同教授は「この数値に関してはまだ不確実な部分が多くある」とも発言している(同)。またパリのアメリカン・ホスピタルの感染症専門医ラップ教授も「ほかの国では、(イギリス変異株を原因とする)より深刻なケースや死亡を認めていない」ことから、「慎重に受け止めたい情報だ」と述べている(BFMテレビ、1/23)。
イギリス変異株には23の変異が認められ、なかでもスパイクタンパクの変異に関わるN501Y(501番目のアスパラギン(N)がチロシン(Y)に変異)に研究者らの注意が寄せられている。新型コロナウイルスが細胞に侵入するときの鍵となるのが、このスパイクタンパクだからだ。
気になるワクチンの効果については、ファイザーとビオンテックは19日、イギリス変異株についての同社ワクチンの有効性を肯定。アストラゼネカ社ソリオット社長も12月末「ワクチンの効果は変わらないと思うが、確実ではないのでテストを行う」予定だと発言した(フランス・アンフォ、1/20)またモデルナ社も25日「研究では従来種と比較し(イギリスで特定された)変異株に対する抗体のレベルに有意な影響は見られなかった」と、同社ワクチンの有効性を発表した(フランス・アンフォ、1/25)。