ウガンダ大統領選、35年の「独裁」に挑んだ元歌手の軌跡
1月14日、ウガンダで5年に1度の大統領選挙が行われた。開票の結果、選挙管理委員会は現職のヨウェリ・ムセベニが58.6%の得票率で当選したと発表。現在76歳のムセベニは1986年から35年にわたり政権を握っている。今回の選挙では、有力な対抗馬として38歳の元歌手ロバート・キャグラニ(通称:ボビ・ワイン)が立候補。得票率34.8%と健闘したものの2番手に終わった。キャグラニは、選挙運動期間中、警察や軍からの妨害を受け、逮捕されるなど、選挙活動を阻止されており、ムセベニが勝利したとする選挙自体にも不正があったとして、訴える姿勢を見せている。
◆ムセベニ長期政権への挑戦
ウガンダのムセベニ大統領は、1986年から現職についており、長期政権が少なくないアフリカのなかでもとくに長い35年の間、政権を握っている。ムセベニは1980-86年のウガンダ内戦(ブッシュ戦争)で国民抵抗軍(National Resistance Army、NRA)を率い、1986年1月に首都カンパラを制圧、オケロ政権を倒し、1月29日に大統領就任を宣言した。以来、5期の任期を務め、今回の選挙を経て6期目に突入する。BBCによると、ムセベニも当初は長期の「独裁」政権に反対する人物であったというが、2004年に考えが変わったようだ。2005年には2期までという任期制限を撤廃し、2017年には75歳という年齢制限を撤廃。結果、76歳時点での今年の大統領選挙への出馬が可能になった。
今回の選挙では総勢11名が大統領に立候補したが、もっとも有力な対抗馬とされたのが国民統一党(National Unity Platform、NUP)のボビ・ワイン。彼は「キダンダリ」というアフロビートとレゲエを組み合わせたようなジャンルの曲を作って歌うアーティストとして活躍し、2000年頃から人気を集めていたが、2017年に国会議員に当選し、政治活動を始めた。現在38歳のワインは、ムセベニが大統領に就任した時点では、たったの3歳。ウガンダの多くの若者たち同様、ムセベニというただ一人の大統領が治める国で生まれ育った世代だ。
今回の選挙において、注目されたポイントの一つが世代だ。CIAのファクトブックによると、ウガンダは人口の年齢分布の中央値が世界で2番目に低く、15.7歳である(日本は48.6歳)。若手のワインは、自身の出身であるカンパラ周辺のスラム街などの地域で「ゲットー大統領」の名で親しまれ、また音楽を通じたメッセージの発信などを行うことで、とくに都市部の若者の支持を集めていた。一方、田舎では現職のムセベニ大統領が人気を集めた。
投票日を前に、フェイスブックは不正アカウントの取り締まりなどを行った。さらに、投票日前後は、政府によってインターネットが閉鎖され、情報網が限定された。また、欧州も米国も、政府が非協力であったという事由により、今回の選挙ではオブザーバーを送らず、透明性の欠ける選挙となった。選挙以降、治安部隊がワインの自宅を取り囲み、事実上、彼はいま自宅軟禁状態にあるという。政府は、彼が外を出歩くことで支持者らが集まり、(選挙結果に反対する)暴動が起こることを防ぐためとしている。ワインが不正を訴えるための行動を起こすことを、阻止する意図があるようだ。
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