ソーシャルメディア締め出し、発言の場を失うトランプ氏

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 1月6日、アメリカ首都のワシントンDCで起こったトランプ大統領支持者による連邦議会議事堂での反乱事件の後1週間が過ぎ、アメリカ(そして世界)では連日トランプ氏の発言を耳に(目に)しない静かな日々が続いている。それもそのはず、トランプ氏が「正式な」発言の場として好んでいたソーシャルメディアプラットフォームのツイッターは、トランプ氏の言動が6日の反乱を扇動したとして、同氏のアカウントを6日に12時間停止。その後一時アカウントは復活したものの、ツイッターは同氏がまた不正選挙に関する虚偽発言などをしたこと、そして同氏の発言が支持者に与える影響について言及し、8日に永久停止処分とした。

◆暴力扇動でソーシャルメディア締め出し
 フェイスブックとインスタグラムに至っては、その前日7日に同氏のアカウントを停止処分としていたが、こちらはトランプ氏自身が頻繁に投稿していたプラットフォームではないためか、それほど問題になっていない。しかし右派はツイッターアカウントを停止することはトランプ氏を沈黙させるに等しいとして、ツイッターの決断をアメリカ合衆国憲法第一条にある「言論の自由」を侵害するとして攻撃している。ちなみに同国憲法上の言論の自由は、政府が国民に対して保障するものであり、不当な差別などがない限り、私企業が利用者に対して課すルールについての規定はなく、利用者が規定を守らない場合、サービスを断る権利はもちろんある。

 アメリカの下院議会はその後13日、反乱を扇動したとして、2度目となるトランプ大統領の弾劾決議案を232票対197票で可決した。一方、ヒラリー・クリントン元国務長官がツイッターで、2016年にトランプ氏に対し「(ツイッターの)アカウントを削除しなさい」と書いた自分自身の投稿にチェックマークをつけた投稿して示したように、国民のなかにはトランプ氏を無言にさせたツイッターアカウント永久停止処分を、より象徴的で歴史的な「勝利」として捉えている人々も多い。トランプ氏に発言の場を与えたツイッターは、同氏の人気を後押しした最大原因とも言えるが、ここに来て同氏が衰退する原因にもなったのである。

Text by 川島 実佳