トルコのEU加盟、ご破算に? デモだけじゃない、ドイツが反対する理由
トルコのEU加盟について、EUは20日の非公開外交官会合で、来週に予定されていた「地域問題」に関する交渉開始を否決した。
議決は全会一致を必要とするが、フィナンシャル・タイムズ紙によると、ドイツが反対、オランダが保留だったと伝えている。
【もともとあった逆風】
トルコの加盟には35の分野で合意が必要。だが、イスラム教国(ただし政教分離が国是)であることや、キプロスの領有紛争のため、加盟には反対の声があり交渉の進展は遅かった。
2005年の加盟申請以来、これまでに13分野が話し合われただけで、さらに合意に至ったのは1分野のみである。
ここ3年に至っては交渉が停止状態にあったが、従来加盟に反対していたフランスで、前向きなオランド政権が成立したことから、流れが変わると期待されていた。
【看過できないトルコデモ弾圧】
ドイツのメルケル首相と保守党は、5月末以来のトルコ政府の過剰なデモ弾圧を問題視しているという。フィナンシャル・タイムズ紙は、デモ隊に同行していたドイツ緑の党のロト共同代表も催涙ガスの被害を受けたことや、ドイツ系病院に対し放水砲が使用されたことを指摘した。
ドイツは、トルコの完全加盟ではなく、「特権的パートナーシップ」に留めることも提案しているようだ。
連立パートナーである自由民主党などは比較的好意的だという。ただ、9月の総選挙を控え、メルケル首相が譲歩の姿勢を見せることは望み薄だと各紙は伝えている。
ワシントン・ポスト紙は、予定議題は「地域問題」なのであってデモの件ではないとはいえ、現在の状況下で加盟協議に応じれば弾圧支持と取られかねないためだと解説した。
【ヘソを曲げるトルコ】
もともと「トルコがEUを必要とする以上に、EUはトルコを必要とします」「必要なら、我々は彼らに出て行けと言えるのです」などと強気だったトルコのバウシュEU相は、「国際的陰謀」として決定に反発した。
フィナンシャル・タイムズ紙は、EUと断絶した場合、トルコで経済不安や権威主義化が一層増大するとの、ラゲンドジク元EU議員の懸念を伝えている。