戦車の終焉? ナゴルノカラバフ紛争でドローンが戦車を大量破壊

停戦後撤退するアルメニア軍(11月13日)|Dmitri Lovetsky / AP Photo

 カスピ海に面するアゼルバイジャン共和国とアルメニア共和国との間で9月末から紛争が起きた。この紛争において、ドローンを利用したアゼルバイジャン側の巧みな戦術が際立った。小型かつ安価なドローンにより戦車が無力化されるような、新たな戦闘の形が迫っているのだろうか。

◆安価な自爆ドローンで対空ミサイルを破壊
 紛争は両国の係争地であるナゴルノカラバフをめぐるもので、9月末から6週間続いた。アゼルバイジャン側はアルメニア陣営の戦車160両以上を破壊もしくは損傷させたと発表しており、そのおもな手段はトルコ製の安価なドローンと戦場上空を飛行する徘徊型ミサイルだ。アルメニア側は一日で50両以上もの武装車両を失った日もあるといい、小国の損害としては甚大だ。英エコノミスト紙の防衛関連編集者であるシャシャンク・ジョシ氏は英タイムズ紙(10月27日)に寄稿し、「トルコ製のドローンは、疑う余地もなく戦場を動揺させた」との見解を述べている。安価なドローンは上空からの偵察から戦車の急所を突いた攻撃までをこなし、とくに予算規模に限りのある小国にとっては革新的な兵器となり得る。

 アゼルバイジャンの発表によると、ハロップと呼ばれるイスラエル製の徘徊型兵器が活躍した模様だ。ハロップは、電波の放出源に向けて自立飛行し、自爆攻撃を仕掛けるドローンだ。9月にはアルメニア側のS-300対空ミサイル砲台1基を破壊した。同国はほかにも、トルコ製TB2ドローンによってアルメニア側の戦車を大量に破壊したと発表している。英フィナンシャル・タイムズ紙(10月28日)は、ドローンなど最新兵器の実戦使用には相応の訓練が必要であることから、アゼルバイジャンがトルコ軍から訓練を受けたものと見ている。

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Text by 青葉やまと