「史上最大」米欧FTA フランスが最も抵抗する理由とは?
17日から北アイルランドで開かれているG8サミットの場で、「史上最大の」米欧自由貿易協定(FTA)の交渉開始が宣言された。議長国イギリスのキャメロン首相は、この協定がEUに1000億ポンド(約15兆円)、米国に800億ポンド(約12兆円)、さらに他地域についても850億ポンド(約12.8兆円)の利益をもたらし、200万の雇用にもつながると力説した。
しかし、フランスは、音楽・映画などの文化産業を取り上げないよう強硬に求めており、欧州委員会はこれを承認する姿勢だという。これに対し米国側は懸念を表明している。
【苦るバローゾ委員長】
米欧FTAは、関税や規制の撤廃を目指しているが、フランスは映画、音楽、テレビ業界などのオーディオビジュアル部門を、「文化的例外」として除外すべきと主張している。欧州委員会は最終的にこれを受け入れたが、バローゾ欧州委員長はサミット前のインタビューで、名指しは避けつつも、こうした動きを「反動的」「反グローバリゼーション」などと批判したという。
フランス側はこの発言に反発。「スキャンダラスで危険」「欧州委員長たる人がフランスについて、あるいはアーティストたちについてでも、そのような発言をし得るものと信じたくありません」などと述べた。
欧州委員会は、発言の対象はフランス政府ではなく、委員長に「個人攻撃をした」人々のことだと釈明した。
交渉を進めるにあたり、欧州側は今後、全27加盟国(今夏クロアチアが加われば28ヶ国)および欧州議会の意見を調整しなければならない。
【大志を抱け】
このような「聖域」主張に対して、オバマ米大統領は、「些少な懸念を越えて全体像に集中する」ことが重要だと声明した。とはいえ、米国側は、EU側がアクセスを求めている米国経済の一部を交渉から除外することで、報復することを示唆していると各紙は報じている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、全く進展のなかった2001年の交渉をはじめ、過去の同様の自由貿易交渉は最終的に、意図したような包括的自由化とは程遠いものにしかならなかったと指摘する。
米国側もまた、「反抗的な議会や、協定によって運命が変わるかもしれない業界からのロビイストの群れ」に対処しなければならないと述べた。
交渉は来月、ワシントンDCで開催されるが、同紙は「当局者らは、“貿易協定よ大志を抱け”と望んでいる」と、期待の大きさを伝えている。