トランプ氏、大統領選延期を提案 郵便投票を「不正」と主張

Andrew Harnik / AP Phto

 今年11月の大統領選まであと3ヶ月に迫ったアメリカ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大阻止の目途は立っておらず、多くの州では安全に投票するための手段の一つとして郵便投票を推奨している。アメリカではこれまで郵便を使っての投票は、軍人を含む外国在住の有権者など、おもに肉体的に投票所に行くことができない人のための不在者投票という意味が強かったものの、今回は新型コロナウイルスの影響で投票所に向かう人を少なくするため、そして投票所に行きたくない人にも郵便による投票を促す意味が強くなっている。
 
 しかし、トランプ大統領は今回の大統領選で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領に世論調査でリードされており不利な立場に立たされているためか、郵便投票をする有権者が増えることを警戒し、ことあるごとに郵便投票が不正選挙の原因になるとツイッターに投稿。7月21日には「裁判所が(法律を)変えない限り、郵便投票によって(今年の総選挙は)我が国の歴史上最も腐敗した選挙となるだろう」と裏付けのない理論を主張している。ネバダ州議会で郵便投票の権利を全有権者に拡大する法案が成立したことに対し、トランプ氏は、同州のスティーブ・シソラック知事が「新型コロナウイルスを理由に州(選挙)を盗もうとしている」「裁判所で会おう」と述べ、8月4日、同州を提訴した。
 
◆ツイッターで選挙延期を提案
 新型コロナウイルス感染予防のためもあり、今年の選挙は安全・迅速に郵便投票で済ませたいアメリカ人も多いはずである。そんな状況のなか、郵便投票が不正選挙につながると主張している政治家はトランプ大統領だけのようだ。ニューヨーク・マガジン(電子版)によると、トランプ大統領やペンス副大統領も郵便投票をしており、実のところ本当に郵便投票が不正につながるとは思っていないはずだ。しかし、いまからそうやって伏線を張っておくことで、万が一大統領選で敗北した際に不正選挙を主張し、選挙を無効にしようとする土台を作っているのかもしれない。

 そのトランプ氏は7月30日についに本心を覗かせた。郵便投票のシステムを攻撃することからステップアップし、選挙の延期を提案したのである。トランプ氏はツイッターで、「全国的な郵便投票(不在者投票ではない、それは良いことだ)で、2020年は最も不正確で詐欺的な選挙となる。アメリカにとって大きな恥となるだろう。人々が正確に、確実に、安全に投票できるようになるまで、選挙を延期しては?」と発言。

Text by 川島 実佳